グローバル・アウトルック

「グローバル・アウトルック」では、専門家が難解な現代の課題について意見を発信しています。

西側が直面する専制政治と神権政治の新同盟

アミン・サイカル  |  2022年07月16日

世界の政治は、分極化の不穏な局面に達している。この状況の根底には、おもに米国が主導する民主主義国家と、ロシアと中国が主導する専制主義国家との間の闘争がある。しかし、ほかにも危険な側面がある。専制主義の大国とアフガニスタンのタリバンのような過激な神権主義勢力との密接な関係が浮上してきたことである。

〈特別インタビュー〉 核兵器禁止条約 第1回締約国会議 アレクサンダー・クメント議長

樹下智  |  2022年07月11日

最大の成果は、最終日に、核なき世界を目指す「ウィーン宣言」と、50項目からなる「行動計画」を採択できたことです。多国間で合意された核軍縮に関する文書で、これ以上に強力なものは今までなかったと思います。これほど多くの国が、核兵器の脅威を訴え、(保有国による核兵器の維持・近代化・改良・増産など)現在の誤った方向性を批判し、核兵器を全面禁止することを強く支持したわけですから。

太平洋諸島における気候関連の移動と人間の安全保障を方向づける

ティム・ウェストバリー  |  2022年07月08日

太平洋諸島の安全保障をめぐる言説は、多くの場合、地域外の意見や関心に支配されている。近頃行われたシャングリラ対話では、太平洋地域における地政学的な戦略的競争をめぐる喧噪の中で、フィジーのイニア・セルイラトゥ防衛相が「われわれの存在そのものに対する唯一最大の脅威は[……]人間が引き起こす壊滅的な気候変動である」と述べた。太平洋島嶼各国の政府は、ずっと以前より安全保障の概念を拡大して人間の安全保障の観点を含める必要があることを認識してきた。直近では、2018年のボエ宣言で、気候変動を「太平洋の人々の生活、安全、福祉にとって唯一最大の脅威」と指摘している。2019年に採択されたボエ宣言行動計画は、人間の安全保障や紛争との相互関係など、気候変動が太平洋地域の安全保障に及ぼす影響をよりよく予測し、理解し、状況に沿った把握をする必要があるという認識を示している。これは、太平洋地域で人々が直面している、単独で扱うことはできない安全保障課題に取り組むためには、伝統的な安全保障のアプローチでは不十分であるという認識を反映している。気候変動は、生計手段、淡水供給、食料安全保障を脅かし、健康に悪影響を及ぼし、貧困と不平等に拍車をかけている。また、太平洋地域の気候安全保障に関する一部の報告では、人口移動や資源競争によって国内紛争や不安定性が引き起こされ、地域安全保障に影響が及ぶリスクが指摘されている。

核秩序崩壊を防ぐ決め手は核タブー

ラケッシュ・スード  |  2022年07月06日

今日の核シナリオは、混乱をきたしているようだ。一方では核タブーが維持され、核不拡散条約(NPT)はほとんど普遍的な条約となっており、核兵器備蓄量は冷戦最盛期の4分の1である。しかし、他方では核リスクがかつてないほど高まっているという認識がある。

ウクライナ戦争で頭もたげる冷笑主義

文正仁(ムン・ジョンイン)  |  2022年07月05日

わずか4カ月の間に、ウクライナ戦争は消耗的な世界規模の紛争となり、すでに西側の疲労感は高まるばかりとなっている。

戦争と核兵器: 本末転倒の論理

ジョリーン・プレトリウス  |  2022年07月04日

私が担当した章では、核兵器禁止条約が持つ力について考察した。章の着想源となったのは、オーナ・ハサウェイとスコット・シャピーロによる2017年の著作『逆転の大戦争史』』である。同書において彼らは、1928年のケロッグ・ブリアン条約、より正式には「国策の手段としての戦争の放棄に関する一般条約」がいかに国際システムを変えたかを示している。この本から私が得た教訓は、禁止とは抽象的道徳の発揮ではなく、権力の問題に関わるということだ。とりわけ重要な点は、人々がいかにして言説の力を集結して国際システムのルールや運用を変更し、それによって侵略戦争が“不可と見なされる”ようになったかである。“不可と見なされる”という表現が意味するところは、侵略戦争が二度と起こらないということではなく、その違法性が個人、組織、国家、国際レベルでのディスインセンティブとなり、戦争が1928年以前のような通常の慣行ではなく逸脱になったということである。また、戦争行使へのディスインセンティブは、紛争の平和的解決へのインセンティブによってさらに強化され、前記全てのレベルで平和のための仕組みが構築されるようになった。

「グローバル・アウトルック」に掲載された論説は著者の視点や意見にもとづき執筆されており、戸田記念国際平和研究所としての方針や立場を必ずしも反映しているわけではありません。