グローバル・アウトルック

「グローバル・アウトルック」では、専門家が難解な現代の課題について意見を発信しています。

核秩序崩壊を防ぐ決め手は核タブー

ラケッシュ・スード  |  2022年07月06日

今日の核シナリオは、混乱をきたしているようだ。一方では核タブーが維持され、核不拡散条約(NPT)はほとんど普遍的な条約となっており、核兵器備蓄量は冷戦最盛期の4分の1である。しかし、他方では核リスクがかつてないほど高まっているという認識がある。

ウクライナ戦争で頭もたげる冷笑主義

文正仁(ムン・ジョンイン)  |  2022年07月05日

わずか4カ月の間に、ウクライナ戦争は消耗的な世界規模の紛争となり、すでに西側の疲労感は高まるばかりとなっている。

戦争と核兵器: 本末転倒の論理

ジョリーン・プレトリウス  |  2022年07月04日

私が担当した章では、核兵器禁止条約が持つ力について考察した。章の着想源となったのは、オーナ・ハサウェイとスコット・シャピーロによる2017年の著作『逆転の大戦争史』』である。同書において彼らは、1928年のケロッグ・ブリアン条約、より正式には「国策の手段としての戦争の放棄に関する一般条約」がいかに国際システムを変えたかを示している。この本から私が得た教訓は、禁止とは抽象的道徳の発揮ではなく、権力の問題に関わるということだ。とりわけ重要な点は、人々がいかにして言説の力を集結して国際システムのルールや運用を変更し、それによって侵略戦争が“不可と見なされる”ようになったかである。“不可と見なされる”という表現が意味するところは、侵略戦争が二度と起こらないということではなく、その違法性が個人、組織、国家、国際レベルでのディスインセンティブとなり、戦争が1928年以前のような通常の慣行ではなく逸脱になったということである。また、戦争行使へのディスインセンティブは、紛争の平和的解決へのインセンティブによってさらに強化され、前記全てのレベルで平和のための仕組みが構築されるようになった。

荒波に架ける橋(Bridging Troubled Waters): 分断社会に結束をもたらす

チャイワット・サーシャ=アナンド  |  2022年07月01日

社会的緊張と紛争の時代に、結束を促す架け橋を築くことが極めて重要になっている。名曲『明日に架ける橋(Bridge Over Troubled Water)』が教えてくれるように、われわれが築いている橋の下に荒波があることを忘れてはならない。

ウクライナ後の核軍備管理・軍縮はどうなる? ある日本人の視点

阿部信泰  |  2022年06月30日

 ロシアがウクライナ側からの攻撃や挑発がないにもかかわらず同国に侵攻したことは、紛争の平和的解決、国家主権と領土保全の尊重、内政不干渉という国連憲章の基本原則に反するとして非難された。日本では、ロシアと同じく独裁国家である中国が台湾に軍事行動を起こすことが強く懸念されていたためか、強い反発があった。これは、2014年にロシアがクリミアを併合した際の日本の控えめな反応とは明らかに対照的であった。当時、安倍晋三首相は日本とロシア間の領土問題を解決するための和解の可能性に依然として期待を抱いていた。中国は日本にとって安全保障上の最大の脅威と考えられている。最近日本で行われた世論調査では、回答者の61%が、中国が日本にとって最大の脅威であると答え、15%がロシア、6%が北朝鮮を挙げていた。

核不拡散から核兵器禁止と核軍縮へと至る道筋: ロードマップ、ロードブロック、スピードバンプ

ラメッシュ・タクール  |  2022年06月28日

この記事は、“The Nuclear Ban Treaty: A Transformational Reframing of the Global Nuclear Order”(Routledge, 2022)の発刊を記念して、2022年6月24日(金)にウィーン軍縮不拡散センターで執筆者が行ったスピーチのテキストです。

「グローバル・アウトルック」に掲載された論説は著者の視点や意見にもとづき執筆されており、戸田記念国際平和研究所としての方針や立場を必ずしも反映しているわけではありません。