「グローバル・アウトルック」では、専門家が難解な現代の課題について意見を発信しています。
協調的安全保障、軍備管理と軍縮に関するグローバル・アウトルック
プーチンの脅しは核不拡散体制にどれほどのダメージを与えたか?
ラメッシュ・タクール | 2022年07月19日
ロシアによるウクライナ侵攻は、核兵器をめぐる世界の言説にすでに重大な影響を及ぼしていると言ってよいだろう。先月ウィーンで開催された核兵器禁止条約第1回締約国会議の審議において、ウクライナにおける戦争は、抑止力としての、また強制外交の手段としての核兵器の有用性と限界、核兵器を放棄したことの見識、核兵器を獲得することまたは他国の核の傘下に入ることへのインセンティブ、そして何より、誰も望まず、誰もが恐れる全面核戦争という激烈なリスクに大きな影を投げかけた。
〈特別インタビュー〉 核兵器禁止条約 第1回締約国会議 アレクサンダー・クメント議長
樹下智 | 2022年07月11日
最大の成果は、最終日に、核なき世界を目指す「ウィーン宣言」と、50項目からなる「行動計画」を採択できたことです。多国間で合意された核軍縮に関する文書で、これ以上に強力なものは今までなかったと思います。これほど多くの国が、核兵器の脅威を訴え、(保有国による核兵器の維持・近代化・改良・増産など)現在の誤った方向性を批判し、核兵器を全面禁止することを強く支持したわけですから。
核秩序崩壊を防ぐ決め手は核タブー
ラケッシュ・スード | 2022年07月06日
今日の核シナリオは、混乱をきたしているようだ。一方では核タブーが維持され、核不拡散条約(NPT)はほとんど普遍的な条約となっており、核兵器備蓄量は冷戦最盛期の4分の1である。しかし、他方では核リスクがかつてないほど高まっているという認識がある。
ウクライナ戦争で頭もたげる冷笑主義
文正仁(ムン・ジョンイン) | 2022年07月05日
わずか4カ月の間に、ウクライナ戦争は消耗的な世界規模の紛争となり、すでに西側の疲労感は高まるばかりとなっている。
戦争と核兵器: 本末転倒の論理
ジョリーン・プレトリウス | 2022年07月04日
私が担当した章では、核兵器禁止条約が持つ力について考察した。章の着想源となったのは、オーナ・ハサウェイとスコット・シャピーロによる2017年の著作『逆転の大戦争史』』である。同書において彼らは、1928年のケロッグ・ブリアン条約、より正式には「国策の手段としての戦争の放棄に関する一般条約」がいかに国際システムを変えたかを示している。この本から私が得た教訓は、禁止とは抽象的道徳の発揮ではなく、権力の問題に関わるということだ。とりわけ重要な点は、人々がいかにして言説の力を集結して国際システムのルールや運用を変更し、それによって侵略戦争が“不可と見なされる”ようになったかである。“不可と見なされる”という表現が意味するところは、侵略戦争が二度と起こらないということではなく、その違法性が個人、組織、国家、国際レベルでのディスインセンティブとなり、戦争が1928年以前のような通常の慣行ではなく逸脱になったということである。また、戦争行使へのディスインセンティブは、紛争の平和的解決へのインセンティブによってさらに強化され、前記全てのレベルで平和のための仕組みが構築されるようになった。
ウクライナ後の核軍備管理・軍縮はどうなる? ある日本人の視点
阿部信泰 | 2022年06月30日
ロシアがウクライナ側からの攻撃や挑発がないにもかかわらず同国に侵攻したことは、紛争の平和的解決、国家主権と領土保全の尊重、内政不干渉という国連憲章の基本原則に反するとして非難された。日本では、ロシアと同じく独裁国家である中国が台湾に軍事行動を起こすことが強く懸念されていたためか、強い反発があった。これは、2014年にロシアがクリミアを併合した際の日本の控えめな反応とは明らかに対照的であった。当時、安倍晋三首相は日本とロシア間の領土問題を解決するための和解の可能性に依然として期待を抱いていた。中国は日本にとって安全保障上の最大の脅威と考えられている。最近日本で行われた世論調査では、回答者の61%が、中国が日本にとって最大の脅威であると答え、15%がロシア、6%が北朝鮮を挙げていた。
「グローバル・アウトルック」に掲載された論説は著者の視点や意見にもとづき執筆されており、戸田記念国際平和研究所としての方針や立場を必ずしも反映しているわけではありません。