
「グローバル・アウトルック」では、専門家が難解な現代の課題について意見を発信しています。
気候変動と紛争に関するグローバル・アウトルック
知識のバスケットを満たす: 太平洋地域の気候変動、人の移動、平和構築をめぐるワークショップ
フォルカー・ベーゲ | 2022年11月14日
そのわずか数日前にニュージーランドのウェリントンで開催されたワークショップでは、この地獄行きの旅が太平洋地域のコミュニティーや国家の安全保障と平和にどのような影響をもたらすかを検討した。参加者は同時に、太平洋地域内外の政策立案者、実務専門家、研究者からなる多様なグループの専門知識と経験を駆使し、地獄への高速道路から降りる道筋を模索した。
気候変動により住む場所を奪われた人々は難民ではない
ティール・クロッセン | 2022年10月13日
はっきりさせておこう。気候崩壊によって住むところを奪われた人々は、国際法に基づく気候難民ではない。彼らは自国の政府による迫害のために国を追われているのではない。移民でもない。仕事や教育を求めて、あるいは家族の近くにいるために、去っていくのでもない。そうではなく、大気汚染を続けるという他国の選択によって、何百万人もの人々が、彼らを保護する法的枠組みがない中、故郷を失う可能性が高いのだ。
オーストラリア政府は気候変動への対処を怠りトレス海峡諸島民の権利を侵害、と国連が認定
クリステン・ライオンズ | 2022年10月04日
国連の委員会は9月23日(金)、オーストラリアの前連立政権が気候危機に十分に対処しなかったことによりトレス海峡諸島民の権利を侵害したと認定する画期的な決定を下した。
太平洋の首脳らが気候危機への再注目を促す
フォルカー・ベーゲ | 2022年09月29日
2022年9月の第77回国連総会において、太平洋の小さな島国(あるいは「大洋」の国々)の首脳らは、地球規模の気候危機への再注目を促した。これらの国々は気候危機の原因に殆ど関与していないにもかかわらず、その影響を最も受けるという事実に基づく倫理的権威を用いて、太平洋のリーダーたちは、もっと思い切った気候アクションを要求し、新しい提案や取り組みを提唱した。
太平洋島嶼国にとって最も重要な安全保障上の懸念は、中国ではなく気候変動
フォルカー・ベーゲ | 2022年08月02日
2022年7月半ばにフィジーのスバで開催された太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟国の首脳会議は、通常以上に地域を超えた国際的注目を浴びた。中国と米国の間で地政学的競争が高まっている時期の開催だったからである。また、2019年以来初めての対面による首脳会議でもあった。過去2年間、コロナ禍により対面会議を開催することができなかったのである。
太平洋諸島における気候関連の移動と人間の安全保障を方向づける
ティム・ウェストバリー | 2022年07月08日
太平洋諸島の安全保障をめぐる言説は、多くの場合、地域外の意見や関心に支配されている。近頃行われたシャングリラ対話では、太平洋地域における地政学的な戦略的競争をめぐる喧噪の中で、フィジーのイニア・セルイラトゥ防衛相が「われわれの存在そのものに対する唯一最大の脅威は[……]人間が引き起こす壊滅的な気候変動である」と述べた。太平洋島嶼各国の政府は、ずっと以前より安全保障の概念を拡大して人間の安全保障の観点を含める必要があることを認識してきた。直近では、2018年のボエ宣言で、気候変動を「太平洋の人々の生活、安全、福祉にとって唯一最大の脅威」と指摘している。2019年に採択されたボエ宣言行動計画は、人間の安全保障や紛争との相互関係など、気候変動が太平洋地域の安全保障に及ぼす影響をよりよく予測し、理解し、状況に沿った把握をする必要があるという認識を示している。これは、太平洋地域で人々が直面している、単独で扱うことはできない安全保障課題に取り組むためには、伝統的な安全保障のアプローチでは不十分であるという認識を反映している。気候変動は、生計手段、淡水供給、食料安全保障を脅かし、健康に悪影響を及ぼし、貧困と不平等に拍車をかけている。また、太平洋地域の気候安全保障に関する一部の報告では、人口移動や資源競争によって国内紛争や不安定性が引き起こされ、地域安全保障に影響が及ぶリスクが指摘されている。
「グローバル・アウトルック」に掲載された論説は著者の視点や意見にもとづき執筆されており、戸田記念国際平和研究所としての方針や立場を必ずしも反映しているわけではありません。