「グローバル・アウトルック」では、専門家が難解な現代の課題について意見を発信しています。
気候変動と紛争に関するグローバル・アウトルック
太平洋の首脳らが気候危機への再注目を促す
フォルカー・ベーゲ | 2022年09月29日
2022年9月の第77回国連総会において、太平洋の小さな島国(あるいは「大洋」の国々)の首脳らは、地球規模の気候危機への再注目を促した。これらの国々は気候危機の原因に殆ど関与していないにもかかわらず、その影響を最も受けるという事実に基づく倫理的権威を用いて、太平洋のリーダーたちは、もっと思い切った気候アクションを要求し、新しい提案や取り組みを提唱した。
太平洋島嶼国にとって最も重要な安全保障上の懸念は、中国ではなく気候変動
フォルカー・ベーゲ | 2022年08月02日
2022年7月半ばにフィジーのスバで開催された太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟国の首脳会議は、通常以上に地域を超えた国際的注目を浴びた。中国と米国の間で地政学的競争が高まっている時期の開催だったからである。また、2019年以来初めての対面による首脳会議でもあった。過去2年間、コロナ禍により対面会議を開催することができなかったのである。
太平洋諸島における気候関連の移動と人間の安全保障を方向づける
ティム・ウェストバリー | 2022年07月08日
太平洋諸島の安全保障をめぐる言説は、多くの場合、地域外の意見や関心に支配されている。近頃行われたシャングリラ対話では、太平洋地域における地政学的な戦略的競争をめぐる喧噪の中で、フィジーのイニア・セルイラトゥ防衛相が「われわれの存在そのものに対する唯一最大の脅威は[……]人間が引き起こす壊滅的な気候変動である」と述べた。太平洋島嶼各国の政府は、ずっと以前より安全保障の概念を拡大して人間の安全保障の観点を含める必要があることを認識してきた。直近では、2018年のボエ宣言で、気候変動を「太平洋の人々の生活、安全、福祉にとって唯一最大の脅威」と指摘している。2019年に採択されたボエ宣言行動計画は、人間の安全保障や紛争との相互関係など、気候変動が太平洋地域の安全保障に及ぼす影響をよりよく予測し、理解し、状況に沿った把握をする必要があるという認識を示している。これは、太平洋地域で人々が直面している、単独で扱うことはできない安全保障課題に取り組むためには、伝統的な安全保障のアプローチでは不十分であるという認識を反映している。気候変動は、生計手段、淡水供給、食料安全保障を脅かし、健康に悪影響を及ぼし、貧困と不平等に拍車をかけている。また、太平洋地域の気候安全保障に関する一部の報告では、人口移動や資源競争によって国内紛争や不安定性が引き起こされ、地域安全保障に影響が及ぶリスクが指摘されている。
中国における市民社会と気候行動、そして国家
ロバート・ミゾ | 2022年06月24日
市民社会は、気候変動との闘いにおける主要な行為主体である。彼らは、各国機関や政府間プロセスが停滞している場合には活を入れ、これらの公的主体に気候変動対策の責任を取らせる力を秘めている。中華人民共和国は、あらゆる点で共産主義独裁国家であるにもかかわらず、気候変動に取り組む団体などの環境市民団体に対し、大幅な、ただし明確に規定されたスペースを認めている。
先住民を脅かす気候変動――彼らの視点を取り入れよ
カリン・ゲルハルト/ジョン・デイ/ラリッサ・ヘイル/スコット・F・ヘロン | 2022年06月13日
オーストラリアの先住民は気候変動による多くの脅威に直面しており、それは食料供給から健康問題にまで及ぶ。例えば、海面上昇によりすでにトレス海峡の島々では浸水が発生しており、壊滅的な被害が生じている。
労働移住と気候正義?
キャロル・ファルボトコ、タウキエイ・キタラ、オリビア・ダン | 2022年05月07日
移住は、気候変動に対する適応策となりうるものである。適応策としての移住には、気候に脆弱な場所からの恒久的移住だけでなく、一時的移住も含まれる。一時的移住者が、資金、新たな知識、改良された技術などの資源を持ち帰る、または送り返すことにより、気候に脆弱な地域のコミュニティーにレジリエンスを構築することができる。
「グローバル・アウトルック」に掲載された論説は著者の視点や意見にもとづき執筆されており、戸田記念国際平和研究所としての方針や立場を必ずしも反映しているわけではありません。