気候変動と紛争に関するグローバル・アウトルック

「グローバル・アウトルック」では、専門家が難解な現代の課題について意見を発信しています。

気候変動と紛争に関するグローバル・アウトルック

太平洋における気候変動、アイデンティティー、主権

フォルカー・ベーゲ  |  2021年08月02日

近頃、「気候変動と太平洋諸国の主権」に関するオンライン会議が開催され、太平洋環礁国に重点を置いてアイデンティティーと主権の問題が議論された。環礁国であるツバル、キリバス、マーシャル諸島から、政治家、学識者、市民社会の代表者が出席し、彼らの経験、見解、政治的取り組みについて講演した。フィジーとオーストラリアからも、法律や政策の専門家が出席した。

コロナ禍を契機とする都市部から地方への逆移住:ツバルの事例

キャロル・ファルボトコ/タウキエイ・キタラ  |  2021年04月13日

コロナ禍の間、太平洋諸島では移住パターンに逆転が見られた。都市の有給雇用が減少するなか一部の地方への移住が増加し、多くの場合は国の政府がそれを奨励した。当初の地方移住の後に都市部に戻る移住者もいたものの、コロナ禍の間に生じたこの都市部から地方への移住は、たとえ一時的現象だとしても、太平洋諸島の人々の間では地方との文化的・血縁的な結びつきというものが、特に外的ショックにさらされた場合にレジリエンスを維持するのに、いかに助けとなるかを理解するうえで参考となる。

コロナ禍が引き起こした船員たちの太平洋諸島への困難な帰還

エッカルト・ガルベ  |  2021年04月02日

太平洋の船員たちは、何カ月も母国を遠く離れるのが常だった。しかし、その旅は突如として、多くのドラマとほとんど壮大ともいえるフラストレーションを伴うものとなった。コロナ禍が始まった時、ほとんどいたるところで船員たちは立ち往生した。契約期間を完全に越えても船上に留め置かれ、交代の船員が来るまで待っている者もいた。交代要員が来なければ、船員たちは休みなく働き続けた。また、世界中で渡航制限が行われたために帰宅できない者もいた。感染拡大を抑えるために各国が国境を閉ざすなか、国境を越えた移動は困難になり、高価になり、ときには不可能になった。海で船の乗組員を交代させることは、陸にいるわれわれが見ることのない悪夢となった。これは、われわれが依存する海運による需給連鎖を脅かし、ひいてはグローバル化した貿易全般を脅かした。

岐路に立つ安保理事会:気候の「 安全保障問題化」か、安全保障の「気候問題化」(Securitisation or Climatisation)か?

チェザーレ・M・スカルトッツィ  |  2021年03月13日

2021年2月23日、国連安全保障理事会(UNSC)は、気候変動と安全保障の問題に関するハイレベル公開討論を開催した。英国の国連常駐代表により開催されたこの会合は、気候変動が国際安全保障にもたらす脅威に対処するためのUNSCの役割を定義することを目的とする一連の公開討論およびアリア・フォーミュラ会合(非公式会合)の直近回である。10年にわたる議論にもかかわらず、UNSCはいまなお一連の「概念」と「手続き」の問題について意見が割れており、本稿で示すように、気候変動に関するUNSCの役割を定義することができずにいる。

中国、キリバス、フィジー、そしてバヌアレブ島の村で: 気候変動の多重層的な影響の教科書的事例

パウロ・バレイナコロドワ  |  2021年03月06日

2021年2月末、太平洋島嶼国キリバスの政府は、14年にフィジー共和国のバヌアレブ島ナトバツ(Natovatu)に購入した土地を、中国と共同で開発する計画を発表した。中華人民共和国が太平洋島嶼国における影響力拡大の動きを強めていることから、この発表は国際社会に若干の懸念をもって迎えられた。太平洋地域で激化している戦略地政学的パワー競争に関連付けて解釈されたのである。

気候変動対策――太平洋諸島フォーラムに必要なのは一つの大きな声

フォルカー・ベーゲ  |  2021年02月22日

2月3日、太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟国のリーダーたちが(オンラインで)集まり、「特別リーダーズリトリート会合(Special Leaders’ Retreat)」を開催した。目的はこの地域連合の新事務局長を指名するためで、パプアニューギニアのメグ・テイラー事務局長が2期目3年間の任期を4月に終了するのを受けて開催された。新事務局長には、クック諸島のヘンリー・プナ元首相が指名された。無記名投票の結果、プナ氏が9票、次点のマーシャル諸島の外交官ジェラルド・ザッキオス氏が8票を獲得した。これは、トップの地位がメラネシア出身者からポリネシア出身者に引き継がれるということを意味する。

「グローバル・アウトルック」に掲載された論説は著者の視点や意見にもとづき執筆されており、戸田記念国際平和研究所としての方針や立場を必ずしも反映しているわけではありません。