「グローバル・アウトルック」では、専門家が難解な現代の課題について意見を発信しています。
コロナ禍を契機とする都市部から地方への逆移住:ツバルの事例
キャロル・ファルボトコ/タウキエイ・キタラ | 2021年04月13日
コロナ禍の間、太平洋諸島では移住パターンに逆転が見られた。都市の有給雇用が減少するなか一部の地方への移住が増加し、多くの場合は国の政府がそれを奨励した。当初の地方移住の後に都市部に戻る移住者もいたものの、コロナ禍の間に生じたこの都市部から地方への移住は、たとえ一時的現象だとしても、太平洋諸島の人々の間では地方との文化的・血縁的な結びつきというものが、特に外的ショックにさらされた場合にレジリエンスを維持するのに、いかに助けとなるかを理解するうえで参考となる。
ミャンマー、「保護する責任」の履行を世界に訴える
ラメッシュ・タクール | 2021年04月07日
私は、この記事を書くことを予想せず、意図せず、希望もしなかった。ミャンマーにおける現在の危機と増え続ける市民の死者数に関連づけて「保護する責任(R2P)」について書くようにとの要請を、私は丁重に断ってきた。ターニングポイントとなったのは、R2Pを掲げる横断幕、Tシャツ、傘を携え、この記事に掲載された写真のように徹夜のキャンドルデモを行う人々の姿である。それらの映像は私の良心を動かした。また、世界の良心を揺さぶるべきである。
北東アジアの安定的平和の構築へ日本が担う不可欠な役割
ケビン・P・クレメンツ | 2021年04月05日
トランプ大統領の「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」という対立的な外交政策は、米国とその同盟国を、相互の衝突、そして中国との衝突が避けられない状況に置いた。その政策は、米中競争に過度の外交的関心と一般の関心を集め、リベラルな世界秩序を損なう状況を生み出し、それによって米国は自らがその価値に疑義を生じるようになった。また、各国を主要国の“味方”か“敵”と決めつけたために、世界的問題に取り組む包括的解決を見いだそうとする国家や同盟国への支援はほとんど提供しなかった。要するに、われわれの共通利益の推進にはほとんど役に立たず、高度な不信と予測不能性を生み出したのである。
コロナ禍が引き起こした船員たちの太平洋諸島への困難な帰還
エッカルト・ガルベ | 2021年04月02日
太平洋の船員たちは、何カ月も母国を遠く離れるのが常だった。しかし、その旅は突如として、多くのドラマとほとんど壮大ともいえるフラストレーションを伴うものとなった。コロナ禍が始まった時、ほとんどいたるところで船員たちは立ち往生した。契約期間を完全に越えても船上に留め置かれ、交代の船員が来るまで待っている者もいた。交代要員が来なければ、船員たちは休みなく働き続けた。また、世界中で渡航制限が行われたために帰宅できない者もいた。感染拡大を抑えるために各国が国境を閉ざすなか、国境を越えた移動は困難になり、高価になり、ときには不可能になった。海で船の乗組員を交代させることは、陸にいるわれわれが見ることのない悪夢となった。これは、われわれが依存する海運による需給連鎖を脅かし、ひいてはグローバル化した貿易全般を脅かした。
ミャンマーにおける残虐なクーデターと「保護する責任」
サイモン・アダムス | 2021年03月30日
2021年3月5日(金)、国連安全保障理事会がニューヨークの厳粛な会議場で会合を開いている間、ミャンマー各地の人々が同国における血塗られた軍政復活に抗議するため、夜を徹して平和的デモを行っていた。厳しい夜間外出禁止令にもかかわらず、ヤンゴンとマンダレーの通りにはデモ参加者たちが集まり、キャンドルの明かりで “We Need R2P”(われわれはR2Pが必要だ) “R2P – Save Myanmar”(R2P―ミャンマーを救え)という文字を浮かび上がらせた。
「グローバル・アウトルック」に掲載された論説は著者の視点や意見にもとづき執筆されており、戸田記念国際平和研究所としての方針や立場を必ずしも反映しているわけではありません。