Climate Change and Conflict サビラ・コエーリョ/クリストファー・イー  |  2021年10月12日

太平洋の市民社会が気候関連の移住に関する地域協議会行う

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 2021年6月、太平洋気候変動移住と人間の安全保障(Pacific Climate Change Migration and Human Security: PCCMHS)プログラムは、気候関連の移住に関する地域市民社会協議会を開催した。このオンライン協議会は、国際移住機関(IOM)が計画したもので、太平洋全域の市民社会の代表者が気候変動に関連した移住、立ち退き、計画移転が人間の安全保障にもたらす影響を検討し、コミュニティーに及ぼす影響について経験を共有し、地域に根差した解決策の策定に向けて話し合う機会を提供した。

 太平洋地域の8カ国から40名以上の出席者が、連帯感を持ってバーチャルで集い、気候関連の移住への対策を支援するプロセスについて議論した。協議会には、太平洋各地の地域団体、学識者、宗教組織、若き気候活動家、LGBTIQアドヴォケイト(擁護者)などが参加した。

 PCCMHSプログラムの主要目標は、国主導の地域対策を策定する際に市民社会の視点を取り入れることであり、また、市民社会協議会は、太平洋地域における気候関連の移住傾向に対する共通の理解と、共通のアプローチを醸成することも目指している。

 ソロモン・カンタIOMフィジー事務所長は、この協議会は「太平洋における気候関連の移住の傾向について詳しく検証し、法律や政策の主なギャップがどこにあるかを理解し、政策立案者と政府が何を考慮するべきかを話し合い、気候変動の影響により移住を余儀なくされる全ての太平洋諸島民の権利を守るために、地域レベルの今後の適切な保護の道筋を模索する機会」になるだろうと述べた。

 協議会の1日目は、気候関連の移住の影響を受けているコミュニティーが共通して経験していることを取り上げた。太平洋の視点から明らかになったことは、移転したコミュニティーの社会的・文化的な基礎構造を守る必要があること、それとともに、今後移住を余儀なくされる家族のために先祖代々の土地、言語、権利を守る必要があることである。この点が改めて非常に強調され、多くの参加者が気候関連の移住という状況で生じる計り知れない「非経済的損失」について語った。

 市民社会活動家のなかでも強力な太平洋的なリーダーシップを発揮したPacificWinのペフィ・キンギは、「安全な道筋を作り、人権を擁護し、将来世代のために文化的アイデンティティーの保全に重点を置く地域的枠組み」を策定する必要があることを、感情をあらわにして訴えた。

 第2セッションでは、参加者は、気候関連の移住をめぐる状況において、どこに法律や政策の主なギャップがあるかの全体像を提示されたうえで、人権に基づく解決策について検討を行った。

 最後に、2日目の協議では、市民社会のメンバーが政府職員や政策立案者に向けた主な提言やメッセージを策定する時間を設けた。その後、太平洋地域における気候関連の移住の問題を強く訴えるために用い得るさまざまな道筋を模索するうえで、市民社会組織(CSO)が果たす役割について議論を行った。

 気候変動と戦う太平洋諸島の学生たち(Pacific Island Students Fighting Climate Change: PISFCC)で活動するソロモン・イェオとアティナ・シュッツは、政策策定に若者が関与する必要があることを力強く訴えた。なぜなら、現在、太平洋地域人口の大多数は若者であり、気候関連の移住に対応する共同の努力に付加価値をもたらす大きな可能性を持っているからである。

 今回の協議で明らかになったことは、どのコミュニティーも置き去りにしないために、気候関連の移住に対する地域の連帯が必要だという点である。参加者が口々に訴えたもう一つのメッセージは、移住以外の選択肢がないコミュニティーに安全な移住経路を確保し、コミュニティーの人権を擁護し、文化的アイデンティティーを守り尊重することによって太平洋地域における気候関連の移住の問題に取り組むためには、地域的な枠組みが必要だということである。

 また、PCCMHSプログラムは、ナウル、フィジー、トンガ、ツバル、バヌアツにおいて各国の協議も開催しており、気候関連の移住をめぐるもっかの力強い動きは続いている。これらの協議会には、主要な政府高官、市民社会の代表者、コミュニティーリーダー、利害関係者が出席した。

 プログラムの重要な要素は、太平洋諸国の政府が気候変動により立ち退きや移住のリスクにさらされたり移転したりするコミュニティーに対する保護の欠落に対処するため、必要な地域的対応策を明らかにできるよう支援することである。したがって、今回の協議と13の太平洋諸国で開催された国家協議の成果は、気候関連の移住に対する国主導の地域対策の策定に有益となるだろう。

サビラ・コエーリョは現在、IOMフィジー事務所のプログラムマネージャーとして3年間にわたる共同プログラム「太平洋気候変動移住と人間の安全保障プログラム」に従事している。それ以前は、IOMアジア太平洋地域事務所の地域移民・環境・気候変動担当オフィサー(Regional Migration Environment and Climate Change Officer)を6年間務めた。その間に、モンゴル、バングラデシュ、ネパール、モルジブ、カンボジア、ベトナム、太平洋地域におけるIOMミッションに技術的な支援を提供した。

クリストファー・イーは現在、「太平洋気候変動移住と人間の安全保障プログラム」のプログラムスペシャリストを務めている。