「グローバル・アウトルック」では、専門家が難解な現代の課題について意見を発信しています。
カザフスタン危機はプーチンに高くつく可能性
アミン・サイカル | 2022年01月11日
石油資源と鉱物資源が豊富なカザフスタンで、燃料価格の高騰をきっかけに全国規模で発生している市民騒乱は、元をたどれば、1990年にこの国がソ連からの独立を宣言して以来の根深い統治問題と構造改革を求める社会の要求がある。この混乱は、カザフスタンの権威主義的な体制だけでなく、ロシアにとっても深刻な課題となっている。それは、ロシアが「近い外国」あるいは安全保障および利益圏と見なしている国の安定を揺るがす可能性をはらんでいる。
プーチンとバイデン: 誰が先に目をそらすか?
ハルバート・ウルフ | 2022年01月02日
しきりに冷戦のレトリックを弄し軍事力を誇示した揚げ句、米国とロシアの大統領が会談し、ウクライナ問題について、また欧州の安全保障構造に関するより一般的な問題について話し合う。EUは直接的な影響を受けるが、取り残され思いを巡らすのみである。
シアルコートのリンチ事件は南アジアにとって何を意味するのか?
チュラニー・アタナヤケ、チラユ・タッカル | 2021年12月24日
2021年12月3日、南アジアのトップニュースはスリランカ人の工場長プリヤンタ・クマラの不幸なリンチ殺害事件一色となった。2010年から輸出管理者としてパキスタンで働いていたプリヤンタ・クマラは、宗教的な言葉が書かれたポスターを剥がしたために殴打され、殺害され、火をつけられた。暴徒は、クマラの行為を神への冒涜と見なしたのである。陰惨な事件は多くの人々の良心を揺さぶり、パキスタン国内では抗議の声が、スリランカでは正義を求める声が上がった。
終戦宣言への懐疑論を受けて
文正仁(ムン・ジョンイン) | 2021年12月14日
文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領が2021年9月21日の国連総会演説で、朝鮮戦争の正式な終戦宣言を実現するために国際社会の協力を求めて以来、この問題は、文大統領の任期終了が近づく中で政府の外交努力の最前線にある。
ドイツからTPNWに重要なシグナル――しかし、それ以上ではない
ハルバート・ウルフ | 2021年12月09日
ドイツの連立新政権は、ドイツの外交・安全保障政策の基盤を揺るがすつもりはない。新政権は、EUとNATOにおける信頼できるパートナーであり続けることを望んでいる。しかし、軍縮と軍備管理努力については重要なシグナルを送っている。177ページに及ぶ連立合意文書には、核兵器禁止条約(TPNW)に関する次のような一節がある。「核不拡散条約(NPT)再検討会議の結果に照らして、また、同盟国と密接に協議したうえで、われわれは、核兵器禁止条約締約国会議へオブザーバーとして(締約国ではなく)参加し、条約の意図に建設的に寄り添っていく」。これは、新しい、重要な考え方である。新政権樹立の前でさえ、米国、フランス、NATOは、彼らがTPNWになびいていると批判していた。NATO全般にいえることだが、ドイツのこれまでの安全保障政策の立場は、NPTのほうが重要度が高く、TPNWは蛇足であり、NPTに関する審議に混乱をもたらすというものだった。TPNWに反対する根拠は、ハイコ・マース前外相によると、ドイツは、「この世界における核弾頭の数を減らすことを目指して努力する」ために、NATOにおいて、また米国の同盟国として自国の影響力を行使することを望んでいるというものだった。
グラスゴー気候変動会議: コップは半分空
イアン・フライ | 2021年12月07日
グラスゴー気候変動会議、通称COP(コップ)26は、多くの人にとって大きな失望をもたらすものだった。英国政府は多くの約束をしたが、石炭火力の段階的廃止への言及をめぐる土壇場での紛糾は、多くの人にとって後味の悪いものとなった。グラスゴーは、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5°Cに抑えるというパリ協定の目標に向けて国際社会の方向性を定めるチャンスだった。太平洋の小島嶼開発途上国にとって、グラスゴー会議は、気候変動に対するグローバルな行動を促す転換点となるはずだった。
「グローバル・アウトルック」に掲載された論説は著者の視点や意見にもとづき執筆されており、戸田記念国際平和研究所としての方針や立場を必ずしも反映しているわけではありません。