グローバル・アウトルック

「グローバル・アウトルック」では、専門家が難解な現代の課題について意見を発信しています。

軍拡競争と新たな冷戦への途上か?

ハルバート・ウルフ  |  2021年03月19日

ちょうど1年前、コロナ禍初期の2020年3月23日に、アントニオ・グテーレス国連事務総長は世界的停戦を呼びかけた。彼は、「今こそ力を合わせ、平和と和解に向けた新たな努力を行うべき時だ。そこで私は、今年末までに世界的停戦を実現できるよう、安全保障理事会を中心に一段と強化した国際努力を求める。……世界は、全ての『ホットな』紛争を止めるために全世界的な停戦を必要としている。同時に私たちは、新たな冷戦を防ぐためにあらゆることをしなければならない」と述べた。彼の緊急アピールは、無視されたままである。

岐路に立つ安保理事会:気候の「 安全保障問題化」か、安全保障の「気候問題化」(Securitisation or Climatisation)か?

チェザーレ・M・スカルトッツィ  |  2021年03月13日

2021年2月23日、国連安全保障理事会(UNSC)は、気候変動と安全保障の問題に関するハイレベル公開討論を開催した。英国の国連常駐代表により開催されたこの会合は、気候変動が国際安全保障にもたらす脅威に対処するためのUNSCの役割を定義することを目的とする一連の公開討論およびアリア・フォーミュラ会合(非公式会合)の直近回である。10年にわたる議論にもかかわらず、UNSCはいまなお一連の「概念」と「手続き」の問題について意見が割れており、本稿で示すように、気候変動に関するUNSCの役割を定義することができずにいる。

新たな優先順位の設定: EUは国内平和と開発プロジェクトから軍事政策に移行

ハルバート・ウルフ  |  2021年03月09日

EUの外交・安全保障政策は、不明確な概念、矛盾する利害、加盟国間の激しい論争に苦しんでいる。もっかのところ、軍事的・防衛的役割を強化することに優先順位が置かれている。10年前によく言われた「平和の力」としてのEUは脇へ押しやられ、地政学的野心が最前線に移動した。

中国、キリバス、フィジー、そしてバヌアレブ島の村で: 気候変動の多重層的な影響の教科書的事例

パウロ・バレイナコロドワ  |  2021年03月06日

2021年2月末、太平洋島嶼国キリバスの政府は、14年にフィジー共和国のバヌアレブ島ナトバツ(Natovatu)に購入した土地を、中国と共同で開発する計画を発表した。中華人民共和国が太平洋島嶼国における影響力拡大の動きを強めていることから、この発表は国際社会に若干の懸念をもって迎えられた。太平洋地域で激化している戦略地政学的パワー競争に関連付けて解釈されたのである。

ウイルスは爆撃できない! 共通利益のための新たな安全保障への期待

デニス・ガルシア  |  2021年03月03日

各国は、国民を守るために現実に必要な投資を犠牲にして、高価な兵器システムを備蓄するために大切な資金を費やしている。国家安全保障の胸算用は、巨額の兵器備蓄がすなわちパワーと地位であることを前提としている。しかし、21世紀の各国に実存の危機をもたらしている課題のどれを取っても、兵器によって取り組むことも、一国の単独行動によって解決することも、さらには軍事手段によって戦うこともできない。

核兵器禁止: ドイツ、オランダ、ベルギーの役割は?

モーリッツ・クット、ヤン・ホーケマ、トム・サウアー  |  2021年02月28日

1月22日、核兵器禁止条約が発効した。核禁止条約とも呼ばれるこの新たな条約は、締約国が核兵器を開発、製造、実験、備蓄することを禁止する。同様に、核兵器の使用、使用の威嚇も禁止する。同条約の締約国は54カ国で、さらに32カ国が条約に署名している。今後さらに多くの国が参加すると予想される。同条約は、地球に対する大きな脅威、すなわち、人類と環境に壊滅的な影響を及ぼす核兵器の戦争使用を法律として禁止している。

「グローバル・アウトルック」に掲載された論説は著者の視点や意見にもとづき執筆されており、戸田記念国際平和研究所としての方針や立場を必ずしも反映しているわけではありません。