気候変動により移住を余儀なくされる人々の土地と安心をいかに確保するか
Policy Brief No.37 - April, 2019
キリバス共和国出身のタビタ・アウェリカ(21歳)は、気候変動に関する環礁諸国連合(CAN-CC: Coalition of Atoll Nations on Climate Change)が開催した会議(2019年12月)で世界の首脳に対し、気候学者の意見に耳を傾け南太平洋地域に暮らす人々の嘆願を聞き入れて欲しいと訴えた。「私は祖先から受け継いだ土地を離れるつもりはない。私の母なる土地を諦めない。私が故郷と呼ぶ唯一の土地を離れはしない」。彼女はそう語った。
気候変動とソロモン諸島の地域社会における紛争と平和構築
Policy Brief No.36 - March, 2019
気候変動がソロモン諸島の地域社会や紛争にもたらす影響について有意義に関与するには、その地域の世界観、すなわちソロモン諸島に暮らす人々の物質的、経済的、政治的、社会的、精神的な世界に深く根差した方法で取り組む必要がある。先般、戸田記念国際平和研究所に寄稿した政策提言で述べたように、気候変動が引き金となって深刻化もしくは発生した紛争を解決するためには、何をもって平和と正義とするかについての地域社会の認識を踏まえた方法で取り組まなければならない。
地域社会の意見を取り入れて気候変動が誘発する再定住計画を改善
Policy Brief No.33 - February, 2019
グローバル・サウスでは、気候変動が誘発する再定住に対し、国家機関、地元の慣習的意思決定機関、市民社会の団体というすべてのステークホルダーが関与するホリスティックで一本化したアプローチが必要とされ、特に、地元の伝統的なアクター(取組主体)およびネットワークとの敬意に満ちた関わり合いが必要である。戸田記念国際平和研究所の政策提言で、筆者らは太平洋のカータレット諸島からの気候変動に誘発された再定住について研究した。この事例は他の場所での将来的な移住の取り組みとも関係する幅広い問題を含む。この種の再定住の実現を希望する場合、これらの教訓が役立つと思われる。
気候変動がもたらすグローバル安全保障上の課題
Policy Brief No.18 - August, 2018
近年、干ばつ、熱波や山火事、欧州難民危機、アラブの春の暴動といった“極端”な事象を気候変動に結び付ける動きがある。気象事象は、人々の健康、生活、食料安全保障など、人間の安全保障のさまざまな重要な面に直接的な影響を及ぼし得る。しかし、気候変動は平和や社会の安定を直接脅かす脅威ともなっているだろうか。本稿は、より包括的な気候安全保障の議論に関する三つの側面について論述するもので、武力紛争が気候変動に対する脆弱性にどう影響するかという逆の因果関係についても簡単に考察する。
オセアニアの気候変動対策における紛争回避に必要な慣習上のアクター(取組主体)と意思決定機関の関与
Policy Brief No.17 - July, 2018
紛争多発傾向という気候変動の影響に対する太平洋島嶼国(PIC)の脆弱性を考えると、この地域に対する関心が希薄であることには驚きを禁じえない。政策担当者は気候変動の影響による紛争の可能性に加え、適応と軽減のための政策および技術と取り組むために、これまでほぼ無視され、または過小評価されてきた、気候変動と紛争の関連性に関する課題に取り組む必要がある。これには気候変動に適応するための文化的要素と精霊信仰上の要素、先住民の知識、先住民固有の手法が含まれる。知識が欠落した部分を埋めるために、よりきめ細かな民族誌的研究により、オセアニアの地元の複雑な背景を探るべきである。西洋的ではなく人間中心でもない概念は特に注目に値する。