協働、紛争、移動:ソマリランドにおける気候変動への現地の対応
Policy Brief No.108 - May, 2021
ソマリアで実施したわれわれのベースライン調査は、気候変動への適応や気候と安全保障の結びつきに焦点を当てた調査を補足するものである。この調査には、三つの役割がある。第1に、ソマリランドの人々が気候変動をどのように経験しているか、その影響にどのように挑み、対処しているかについてインタビュー調査を行い、そこから得た知見を共有する。第2に、気候変動、紛争、協働、移動が交わる領域で問題となっている複雑性への注意を喚起し、限られた安全保障課題の枠を超えて考える基礎として、詳細な研究課題に取り組むことを奨励する。そして第3に、当初の調査結果に基づく一連の提案を示すことである。
コロナ禍を契機とする都市部から地方への逆移住:ツバルの事例
Policy Brief No.106 - April, 2021
コロナ禍の間、太平洋諸島では移住パターンに逆転が見られた。都市の有給雇用が減少するなか一部の地方への移住が増加し、多くの場合は国の政府がそれを奨励した。当初の地方移住の後に都市部に戻る移住者もいたものの、コロナ禍の間に生じたこの都市部から地方への移住は、たとえ一時的現象だとしても、太平洋諸島の人々の間では地方との文化的・血縁的な結びつきというものが、特に外的ショックにさらされた場合にレジリエンスを維持するのに、いかに助けとなるかを理解するうえで参考となる。
フィジーにおける気候変動、移住、平和構築:課題、議論、進むべき道
Summary Report No.97 - November, 2020
2020年10月5日と6日、戸田記念国際平和研究所、国際NGOのコンシリエーション・リソーシズ、トランセンド・オセアニア(Transcend Oceania)は、「比較学習: フィジーにおける気候変動、移住、平和構築(Comparative Learning: Climate Change, Relocation and Peacebuilding in Fiji)」と題した対面とオンライン併用ワークショップを開催した。
気候変動と安全保障: インドの視点
Policy Brief No.94 - October, 2020
気候変動シナリオにおけるインドの安全保障の未来は不確実である。本論文では、気候に起因する大量移住、国内動乱、国境警備の弱体化、原理主義の台頭など、インドが直面する課題の分析を試みる。より広い国家安全保障の文脈において気候変動を主流化し、織り込もうとする政府の努力を詳細に検討し、最後に政策上の主な考慮事項を提示する。
「我々あり、ゆえに我々生きる」という太平洋地域のエコリレーショナルな精神性と気候変動のストーリーの転換
Policy Brief No.56 - October, 2019
太平洋地域の住民は数世紀にわたり、気候をめぐる危機を精神的・文化的世界の中で乗り越えて生き残り、対応し、今もそれを続けている。国際社会の大部分が科学から情報を得て気候問題と取り組む各自の役目を務める一方、地域社会の多くでは、文化的・精神的な信念と慣習が不可欠な役割を果たすことも認識されている。本稿では、太平洋地域に住む多くの人々が、何世紀もの間、気候に対応するための指針としてきた「エコリレーショナルな精神性(eco-relational spirituality)」(自然との関係性に基づく精神性)の「我々あり、ゆえに我々生きる(we are, therefore we live)」という中心概念を取り上げる。