ニュース・お知らせ

ケビン・クレメンツ所長が国際関係学会(ISA)「卓越した学者賞」を受賞

2022年03月30日 - ニュース

 このたび戸田記念国際平和研究所のケビン・クレメンツ所長に、国際関係学会(International Studies Association :ISA)から平和研究部門の2022年の「卓越した学者賞」(2022 Distinguished Scholar Award)が授与されました。授賞式は、3月30日(ニュージーランド時間)にオンラインで開催された国際関係学会大会の「卓越した学者賞討論会」の席上で行われました。  ISAは、国際問題、国境を超えるグローバルな課題を理解するために1959年に設立された、最も歴史のある学際的な学会の一つです。平和紛争学の分野で顕著な業績を残した学術者に毎年この賞を授与しています。  クレメンツ所長の軍縮、紛争解決、アジア太平洋地域における歴史問題と和解に関する幅広い研究とその質の高さ、そしてオーストラリアやニュージーランドのいくつかの研究機関や組織の設立に関わる活動が授賞理由となっており、戸田平和研究所における世界的な研究ネットワーク作りへの評価も含まれるといえます。 <授与式におけるオタゴ大学国立平和紛争研究所のサンヨン・リー(SungYong Lee)准教授による賛辞>  ケビンのこれまでの功績は、数え上げればきりがありません。それをまとめるのは至難の業ですから、特にここ15年のケビンの活動の中から、私の主観で選び、紹介したいと思います。  2003年、ケビンはオセアニアに戻り、クイーンズランド大学(ブリスベン)に平和紛争研究所を設立することに同意しました。6年以上にわたって、同研究所を平和・紛争研究(PCS)の最も著名な研究所の一つに育て上げました。彼のリーダーシップのもと、同研究所はハイブリッド平和構築に関する概念を含め、今後の研究のために極めて多くの重要な概念的・理論的基盤を提案・発展させてきました。また、同研究所の積極的な発展により、オーストラリアおよびオセアニア地域における様々な平和の課題に関する認識論的対話を活性化させてきました。  クイーンズランド州で6年間活躍した後、母国ニュージーランドに戻り、オタゴ大学ダニーデン校の平和紛争研究科の初代学科長とオタゴ大学国立平和紛争研究所(NCPACS)の所長に就任しました。この研究所は国内で初めて、そして現在でも唯一の、研究と教育のすべてを平和・紛争研究(PCS)に捧げている研究所です。過去10年間、同研究所は特にアジア太平洋地域を中心とした様々な平和の課題に関する研究の中心地として発展してきました。  ほぼ並行して、彼の学術活動の一部は、彼が数年総合所長を務めていた東京の戸田記念国際平和研究所と連動していました。NCPACSを退職したのち、同研究所の所長に就任しました。戸田平和研究所は彼のリーダーシップのもと、協調的安全保障と軍備管理・軍縮、気候変動と紛争、ソーシャルメディアと平和構築、北東アジアの平和と安全保障、先端技術と安全保障・平和という分野で、確固たる研究結果を構築しています。戸田平和研究所では従来の研究成果に加えて、研究成果をアカデミアの外に広く発信することにも力を注いでいます。その一環として、「グローバル・アウトルック」という新しいシリーズを立ち上げ、現代のさまざまな問題について簡潔な評価を発信しています。  つまり、ケビンは過去15年間にアジア太平洋地域の三つの平和研究所を発展・強化させ、新たな研究課題を推進し、何百人もの学生や現場実務者を支援してきたのです。さらに、国際平和研究学会(IPRA)の事務局長を務めながら、世界の研究者と現場実務者の学術交流を支えてきたことも特筆すべきでしょう。  ニュージーランドのオタゴで、ケビンは非常に多くの平和活動に携わってきました。その代表的なものが、アーチボルド・バクスター記念信託の議長としての活動です。バクスター氏はオタゴ出身で、ニュージーランドの第一次世界大戦の良心的兵役拒否者の中で最も著名な一人であります。  その生涯をかけた平和活動への献身が認められ、オーストラリア国連協会(2008年)、広島創価学会(2012年)、ニュージーランド平和財団(2014年)など、複数の組織・団体から平和賞が授与されています。今、彼は国際関係学会(ISA)の認める卓越した学者として、このバーチャルルームに座っているのです。そしてついに、今年6月にルクセンブルク平和賞を受賞するという嬉しいニュースも最近耳にしました。  私がオタゴ大学に着任した2014年から、彼の学問や実務に関連する活動の多くの側面に立ち会う機会に恵まれました。その中で、特に印象に残っているのは、彼の平和構築者としての姿勢と役割です。本日は、そうした例の中から二つだけご紹介したいと思います。  まず、ケビンはその豊富な知識と経験に基づき、人々が本当に必要としているときに、今後の発展のための明確な洞察を提供してきました。例を挙げれば、2019年3月、クライストチャーチの二つのモスクで襲撃者がニュージーランド人を数十人も射殺したときです。テロのニュースが流れたとき、多くの人がパニックに陥り、具体的に何をすべきなのかが分かりませんでした。私もその一人でした。そんな時、テロ発生から2時間以内にケビンのFacebookへの投稿を目にしました。その投稿の中で、彼はテロの本質を分析し、考えるべき問題点を提示し、ニュージーランドがどう対処すべきかを提案していました。その提案の一つが、「半自動小銃の禁止」です。これは、この国の多くの人々にとって行動の指針となるものであり、私たちは半自動小銃の禁止を求めるロビー活動を開始しました。政府はこの提案を受け入れ、2週間以内に法律として成立させました。  二つ目に、ケビンは決断力のある男性です。本当に必要なことだと思ったら、何が何でも実現するために行動します。例えば、アーチボルド・バクスター記念信託は、大きな犠牲を払って平和に尽くしたバクスター氏を偲ぶために、ダニーデンの中心街に記念碑を建てることを計画していました。しかし、ご想像のとおり、このプロジェクトにはかなりの資金が必要でした。財団は資金集めのために何度もキャンペーンを行いましたが、それでもプロジェクトを完成させるのに十分な資金が集まりませんでした。そのため、ケビンは、自分の絵の大半を売却して、資金不足を補うことにしました。人々はケビンのその行動に深く感動し、オークション当日に全ての絵画が落札されました。  このようなインスピレーションと断固たる行動をもって、私たちが平和構築者としての生き方を学ぶことができるよう導いてくれたのです。これまで一緒に仕事をしてきた仲間たちとともに、ケビンに敬意を表します。

第1回「市民平和セミナー」開催のお知らせ

2022年03月29日 - ニュース

テーマ「平和的手段による平和 : 侵略的暴力に対する創造的、非暴力の挑戦」 “Peace by Peaceful Means: Dealing with Aggression Creatively and Non-violently” 戸田記念国際平和研究所では、非暴力による持続可能で平和な世界の構築を目指し、国内外の研究者・専門家とネットワークを結び、世界や北東アジアの安全保障、ソーシャルメディアや気候変動、先端技術と平和の問題など幅広い分野にわたり研究を進めています。このたび、こうした平和研究事業の内容をご紹介するとともに、より広範な市民レベルでの平和創出へ向けて、一般市民・学生の皆様を対象にオンラインによる「市民平和セミナー」を開催してまいります。多くの皆様のご参加をお待ちしております。 第1回テーマ 「平和的手段による平和 : 侵略的暴力に対する創造的、非暴力の挑戦」 【講師】ケビン・クレメンツ博士(戸田記念国際平和研究所所長) 【日時】2022年4月23日(土)午後2時開会(午後3時半終了予定) 【場所】オンライン(Zoomウェビナー) 【主催】戸田記念国際平和研究所 【講演言語】英語(日本語で同時通訳します) 【参加方法】事前登録制(先着500名、参加費無料) 先着の500名に達したため、参加のご登録は締め切らせていただきました。 セミナーの模様は、後日当ホームページに動画を掲載いたします。 セミナーのフライヤーはこちら

核兵器禁止条約に関する書籍を出版

2022年02月02日 - ニュース

 戸田平和研究所の新刊「The Nuclear Ban Treaty: A Transformational Reframing of the Global Nuclear Order」がルートレッジ社から出版されました。  本書には核兵器禁止条約による核秩序の規範的再構築について説明、議論、評価した論文が集められており、当研究所のラメッシュ・タクール上級研究員が編集しました。核禁条約の発端と交渉の歴史、そして条約の背景にある人道的イニシアチブ、および今後、世界の核秩序の規範的枠組みがたどる軌跡とその形について知ることのできる一冊となっています。  世界の著名な学者、政策立案者、シンクタンク研究員、外交官がこれまでに本ウエブサイトで発表した「政策提言」や「グローバル・アウトルック」記事33編と共に、ラメッシュ・タクール氏による序文と結論が収められています。  戸田平和研究所のケビン・クレメンツ所長は、本書が時宜を得た出版となったことについて「2022年には核兵器禁止条約の第1回締約国会議が開催される予定です。世界で核兵器の実存的脅威が続いている中、本書の出版は現在の地政学的環境を鑑みた時に、これ以上ないほど重要です」と述べました。  本書は、核兵器禁止条約を知るための重要な手引書であり、核軍縮、軍備管理、外交を学ぶ学生やその分野の政策立案者にとって有用な一書となるでしょう。  本書はハードカバー、ペーパーバックまたは電子書籍で、ルートレッジ社のホームページから注文することができます。

リサ・シャーク教授 新任のお知らせ

2022年01月28日 - ニュース

当研究所の「ソーシャルメディア、テクノロジーと平和構築」分野を担当する上級研究員であり著名な平和学者・実践者であるリサ・シャーク教授が、米国のノートルダム大学クロック国際平和研究所に平和実践研究の「リチャード・G・スターマン シニア・プロフェッサー(教授)」に就任しました。 詳細については以下のリンクからご確認ください。(英語) https://kroc.nd.edu/news-events/news/lisa-schirch-joins-kroc-institute-as-starmann-chair-in-peace-studies/

当研究所のYouTubeチャンネルがオープン

2021年09月10日 - ニュース

Image: Flickr/Esther Vargas  戸田記念国際平和研究所は、より幅広い方々に研究所の研究に触れてもらえるよう、新しくYouTubeチャンネルをオープンしました。  各研究テーマの専門家を招聘し討論を録画・公開するシリーズ「パブリック・カンバセーション」が研究所のチャンネルにアップされています。第1回目のパブリック・カンバセーションは、研究事業のひとつである北東アジアの平和と安全保障、そして信頼醸成についてです。  バリー・ブザン、エブリン・ゴーの2氏をゲストに迎え、進行はクレメンツ所長とヒュー・マイアル上級研究員が行いました。  当研究所所長ケビン・クレメンツは、以下のようにコメントしています。 「当研究所は、幸いにも、北東アジアの平和と信頼醸成の分野において、多くの主要な研究者と協働してきました。この度、カンバセーションの参加に賛同し、彼らの智慧を共有していただけたことは、とても名誉なことです」 「今回のカンバセーションが広く共有され、視聴されることを望みます。例えば、教室で、そして、北東アジアの安定的平和への行動計画を議論している政策立案者などです」  すでに6本のパブリック・カンバセーションがYouTubeチャンネルにアップされています。これらの啓発的な議論をぜひご覧ください。そして、シェア、チャンネル登録していただければ幸いです。 Overcoming Shino-Japanese alienation  バリー・ブザン/エブリン・ゴー Prospects for Peace on the Korean Peninsula  文正仁/ピーター・ヘイズ US Policy towards North Korea ジョセフ・ユン/フランク・オウム Backsliding: The subversion of democracies in 21st century ステファン・ハガード/ロバート・カウフマン China and World Order in the 21st Century トン・ジャオ On ‘On Tyranny’ ティモシー・スナイダー/ノラ・クリュッグ