協調的安全保障、軍備管理と軍縮 (政策提言 No.134)
2022年07月28日配信
中国、インド、パキスタンの
「核のトリレンマ」を管理するために
2022年2月18日、21日開催の
プロジェクト研究発表会に基づく政策提言
タンビ・クルカルニ
Image: Tomasz Makowski/Shutterstock.com
要旨
南アジアでは、三つの核保有国である中国、インド、パキスタンが、危険な戦略地政学的関係の中で共存している。関係を特徴付けるのは、国境を接していること、核兵器備蓄の増加、兵器プラットフォームの拡大と近代化、民族統一主義的な領有権の主張、そして紛争の相互関連である。冷戦時代には2大国の間で、また米国と同盟国の間で戦略核政策をめぐる対話の慣行があったのに対し、同様の対話は南アジアに存在しない。また、大陸を横断する国家間関係を制御・調整し、緩衝と危機安定化の役割を果たしうる包括的な地域組織もない。たとえ限定的でも南アジアで地域的な核応酬が起きれば、人間、環境、政治に壊滅的な影響が及ぶ恐れがある。中国、インド、パキスタンが絡む南アジアの「核のトリレンマ」は、リスクは小さいもののインパクトが大きい、そしてまだ十分に研究されているとは言えない地政学的脅威である。
2021年、核不拡散・軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)と戸田記念国際平和研究所は、中国、インド、パキスタンの間の核と防衛のダイナミクスを分析する研究プロジェクトを立ち上げた。プロジェクトは、APLNによる過去の論文とブルッキングス研究所の報告書「戦略的な鎖」に基づいて、中国・インド・パキスタンの核関係の輪郭を描き、紛争、さらには実際的なリスク低減、危機安定性、信頼醸成措置の主要な促進要因を特定することを目指す。また、プロジェクトは、3カ国全てが関与する核規制体制の可能性を模索することも目的とする。2022年2月にプロジェクトが開催した研究発表会では、中国、インド、パキスタンなどのインド太平洋地域の専門家が、南アジアにおける3国間のダイナミクスに関する学術的・政治的分析を発表した。本報告書は、これらの議論で示された分析を総合的に論じる。
議論は、南アジアで進展する核のトリレンマが緊張と矛盾に満ちていることを浮き彫りにするものであった。南アジアにおいて、中国、インド、パキスタンのいずれも意図的に核兵器を使用することはないと思われるが、不注意や事故によって核兵器が使用されるリスクは依然として高い。実戦における反応時間を短縮する破壊的新興技術の導入に特徴付けられる核能力増強とともに、対話の断絶、政治的緊張の高まりが、中国、インド、パキスタンの核のトリレンマに拍車をかけ、誤認や誤解が生まれやすくなっている。本報告書には、南アジアの三つの核保有国の間でリスクを低減し、いっそうの信頼を構築するための一連の政策提案を収めている。主眼は、事故や不注意に起因する核応酬を防ぐことである。
はじめに
中国、インド、パキスタンの核政策、それらの相互作用のありかたを十分に理解するためには、これらの国の利害と制約を理解しなければならない。中国・インド・パキスタンの3国間の核関係には、三つの顕著な要素がある。第1に、核戦争のコストは負担できるものではないと考えられているため、3カ国とも核による平和に強い関心を持っている。第2に、地理条件や一般的な気候パターンの状況を考えると、特にインドとパキスタンの2国間では、核兵器使用の誘惑に駆られても、相手に核兵器を使用すれば自国も放射性降下物の被害は免れないという自己抑止が働く。第3に、インドとパキスタンは共通の言語を使用しているが、政治的語彙は同じではないという文化的現実があり、また、中国とインドは歴史的に、言語は共通でないとしても、グローバルサウスの擁護者として国際的に同じ政治的言葉遣いを用いてきた。
従って、これらの核保有国が意図的に戦争を行使するということは、まず起こりそうにない。しかし、インド・中国関係、インド・パキスタン関係の厄介な性質を考えると、どのような対立もナショナリズムに火をつける恐れがあり、意図しない、あるいは偶発的な核兵器使用の可能性を排除することはできない。南アジアでは、意図や能力に対する誤認、迫りくる敵兵器や核報復の兆候があった場合の時間的余裕のなさに起因して、偶発的戦争が起こる恐れがある。
ドローン、極超音速システム、対衛星能力、精密誘導弾、スタンドオフ兵器システム、サイバー能力および宇宙向け能力など、新たな破壊的技術により、2組の2国間関係における戦略的リスクが高まっている。これらの技術は、相手の意図や能力に対する誤認を助長し、特に核兵器がリスク操作に利用される場合にそれが偶発的に使用される可能性を高める恐れがある。紛争地帯における軍事インフラの強化は、インドと中国の双方で動員を加速し、相手の戦略的方向性の読み誤りを招く可能性が高い。2020年のインド・中国国境紛争や2019年のインド・パキスタン危機では、地上の危機を海上に移行させる傾向など、領域横断的なシグナリングが見られた。いずれの側も「不意打ち」攻撃をする可能性は低いと見られるが、インドも中国も開発中である海上配備型の核兵器やキャニスター弾が存在するようになれば、先制不使用(NFU)政策にもかかわらず、今後これらの国々が非警戒態勢を維持することはいっそう難しくなると考えられる。
このような状況を背景に、2022年2月の研究発表会では、専門家らが、南アジアにおける核のダイナミクスに重大な影響を及ぼす七つの主なテーマについて議論した。以下で、各々のテーマについて論じる。
1. 南アジアに存在するのは、核の鎖か、トリレンマか、2組の非対称な2国間対立か?
冷戦時代における核の二極体制と異なり、現在のグローバルな核秩序は、核保有国間のいくつかの結びつきからなっている。これらの結びつきは、核の「戦略的な鎖」と言うことができるだろう。インド太平洋地域では、四つの核武装国(中国、インド、北朝鮮、パキスタン)が関与する複雑な核抑止関係、さらには地域で顕著な存在感を放つロシアと米国がこれらの関係に緊密に絡む状況に、核の鎖が見て取れる。この鎖を構成するいくつかの結びつきは、他の結びつきよりも緊密である。
南アジアでは、インドとパキスタンの核関係は、歴史的、概念的、政治的、戦略的、そして実際的にも、核大国としての中国と密接に関連している。その結果、中国、インド、パキスタンの間に形成された「核のトリレンマ」は、より大きな核の戦略的な鎖の一部をなしている。しかし、中国とインド、インドとパキスタンの2国間対立には相互依存性がないため、南アジアを特徴付けるのは核の戦略的トリレンマではなく2組の非対称な核の2国間対立であると主張する人々もいる。このことは、南アジアにおける核リスクにいかに対応するかに影響を与える。
南アジアにおける核エスカレーションのリスクは、中国・インドの2国間よりもインド・パキスタンの2国間においてより顕著であると一般的に理解されている。インドとパキスタンの対立関係は、カシミール地方をめぐる長年の領有権問題や、低強度紛争が高強度の軍事衝突にエスカレートするリスクを考えると、より根深いと言える。それでも、インドとパキスタンのどちらも今までのところ、両国の危機が核レベルまでエスカレートすることがないようにしてきた。
中国・インドの紛争は、核戦争の火種になるとは見なされていない。これは主に、両国の核政策や核兵器に対するアプローチが、防衛戦力、比較的小規模な核兵器、核の先制不使用政策といった点で類似していることによる。中国もインドも、相手を実存的脅威とは認識していない。しかし、中国が計画する核能力の急激な増強と、デュアルユースシステムの使用拡大は、インドの中国に対する脅威とリスクの認識に影響を及ぼし、インド自身の能力を増強する可能性がある。例えば、インド洋における中国海軍のパワー拡大に対抗するため、インドは海軍力への投資を増やす可能性が高い。そうなれば、ただちに核のトリレンマが生じる。インドが公言する政策は、「信頼できる最小限の抑止力」を保有することである。しかし、対中国では「信頼できる」インドの抑止力と態勢が、同時に対パキスタンでは「最小限」でありえるだろうか?
中国は、南アジアでは地域地政学的ダイナミクスを構成し、グローバルには米国と双璧をなす。戦略的な鎖の議論によれば、中国は、米国とロシアの核能力に戦略的に反応し、インドは中国の核能力に反応し、パキスタンはインドの戦略的能力に反応する。従って、中国は、大国からなる核の均衡と南アジアとの連結部となる。米国と中国の戦略的競争は、中国、インド、パキスタンの関係に影響を及ぼす。
南アジアの核ダイナミクスを厳密に核の鎖、トリレンマ、あるいは2組の別個の2国間対立と特徴付けるべきかどうかについて、専門家らの合意はなく、三つの分析的視点の全てが、中国、インド、パキスタンの関係を説明するために用いられてきた。とはいえ、中国が重要な役割を果たしていることについては、ほとんどの専門家が同意する。リベラルな国際秩序においてルールを破りかねない国と懸念される(北京は否定しているが)中国は、グローバルリーダーとして浮上しつつあり、ルールを作る側になろうとすると予想される。このような移行が起きれば、数世紀ぶりに、ルールを作り、ルールを執行する国が、西側の、英語を話す、自由民主主義と資本主義を掲げる国ではなくなるのである。この移行は、地政学的断層線を挟んだ全ての側に心理的再適応を迫るものとなるだろう。
2. パキスタンとインド、中国とインドの2国間関係に見られる共通点、類似点、相違点
南アジアにおいてインド、パキスタン、中国の間の紛争を促進する主な要因には、未解決の領土問題、核保有国が他の核保有国に対して行使するテロ、相手国と第三国との関係に対する認識、そして相手国の意図に対する認識がある。3カ国全てで拡大するハイパーナショナリズムも、紛争エスカレーションのリスクを高めている。
中国は、核不拡散条約(NPT)に加盟していないインドとパキスタンを正当な核保有国と認めていない。また、核問題を論じる対等なパートナーとしても認めていない。自身を地域においても世界においてもリーダーであり、また、アジアで唯一、国際の平和と安全に責任を負う国連安全保障理事会常任理事国として、NPT体制の責任ある一員であると任じている。しかし、周辺地域における核兵器の存在自体、そしてその存在がもたらすリスクがあるからこそ、中国は、他の2カ国と核をめぐる対話を行うべき理由がある。
インドとパキスタンはNPTに加盟していないが、その理由はそれぞれ異なり、両国とも核兵器の備蓄を拡大し続けている。インドは、自国をパキスタンとは格が違うと見なしている。インドは、パキスタンが国家が支援する越境攻撃と過激主義によってインドに痛手を負わせるという戦略を追求しており、パキスタンの戦術核兵器配備は判断ミスや事故に起因する戦争のリスクを高めると考えている。パキスタンは、インドによる実存的脅威を認識しているが、インドに対して「弱者の力」を振りかざしている。しかし、度重なる関係の破綻にもかかわらず、インドとパキスタンはどちらも、既存の2国間信頼醸成措置(CBM)を保持することを重視している。
中国とインドは、核兵器を、他の核兵器保有国による核の脅迫や抑圧に対抗する保証と見なしている。つまり、核兵器を軍事的に使用可能な兵器というより主に政治的道具と認識しているのである。両国とも、核兵器を通常の紛争では使用しない、また、非核兵器国に対して使用しない政策を採用している。両国とも、懲罰的政策による抑止を受け入れ、NFU政策を宣言し、報復的核戦力の残存性に重点を置いている。中国とインドはまた、核軍備管理に対する同様の警戒と懐疑を抱いている。どちらも、核兵器禁止条約(TPNW)を拒絶し、同条約はグローバルな核ゼロに向けた正しいアプローチを取るものではないと主張している。他の2カ国、具体的にはパキスタンと米国との関係は、中国・インドの2国間関係に影響する重大な要因である。パキスタンと中国は、インドが米国と親密であることを懸念しており、インドは、中国とパキスタンによる二正面の脅威を認識している。
中国、インド、パキスタンの核抑止構想は、それぞれ異なる。中国は、米国の弾道ミサイル防衛と長距離戦略ミサイルに対する脅威認識に基づき、デュアルユースシステムの配備や、通常兵器と核兵器の混合配備を好む。インドは、核兵器、化学兵器、または生物兵器による攻撃がインドや場所を問わずその軍隊に加えられた場合、「大量報復」を行うと警告する核ドクトリンを掲げる。パキスタンは、戦術核兵器も含め、先制使用を信じている。3カ国の「核指揮、統制、通信」(NC3)システムには、顕著な違いがある。中国のNC3は高度に中央集権化され、ネットワーク化されており、中国共産党と人民解放軍(PLA)ロケット軍によって統制されている。ロケット軍は、中国のミサイル能力拡大とともに、長年の間に中国のNC3システムにおけるその地位を獲得した。インドでは、核兵器に対する統制は政治による部分がより大きく、軍による部分がより小さい。パキスタンは、指揮統制を委譲しないシステムを維持していると主張するが、戦術核兵器の配備を見ると、統制権が戦場指揮官に事前委譲されていることがうかがえる。
南アジアの三つの核武装国は、困ったことに、共通のリスクという感覚がないようである。パキスタンは、戦略的抑制体制やインドとの不戦協定によってあらゆる通常紛争を予防することを目指している。インドは、中国をより大きな脅威として認識している。しかし、中国の重点は米国にあり、おおやけにインドを核の脅威と見なしてはいない。その一方で、3カ国はいずれも、過激主義、分離主義、テロの脅威に直面している。これらの脅威に立ち向かうという共通の利害に基づいて、3カ国は上海協力機構(SCO)のような議論の場を設けたのであり、従って、3カ国が核兵器以外の安全保障課題について議論するという前例は存在する。2組の核の2国間対立の間には共通点や類似点があるにもかかわらず、相違点や、相互に依存する共通の脅威という意識の欠如により、戦略的安定性を維持するための3国間措置について合意することが難しくなっている。
3. 抑止関係の一貫性
よくできた一貫性のある抑止関係とは、冷戦時代の米国とソ連の例のように、実際の脅威が抑止される関係である。一つの見方として、南アジアにおける一貫性のある核抑止均衡は、インドとパキスタンの2国間対立のみに当てはまるというものがある。その一方で、インド・パキスタンの核の2国間対立に見られる一貫性は、相互主義、核に関する学び、そして抑止に関する相互理解によるものだという主張がある。このような2国間の核抑止関係は、25年をかけ、度重なる危機や核対話、それと並行してインドとパキスタンの分析専門家らの間で行われた努力、状況を十分に理解したうえで核兵器を配備するという交渉に基づいたCBM(信頼醸成措置)を通して形成された。また、その一方で、インドと中国の間には連携や相互武装があるにもかかわらず、核開発に関しては相互関係が希薄である。インドと中国の間には、核問題を議論するいかなる公式対話もない。また、両国の間には核危機が生じたことがないため、相互抑止に関する経験や相互学習が得られていない。インドの核開発は主に中国の能力に触発されているが、その逆も同様とは必ずしも言えない。従って、中国・インドの核の2国間対立は「分断された抑止」の均衡と言うことができるだろう。
にもかかわらず、インドと中国の間に危機がないわけではなく、近頃の国境紛争がそれを示している。経済を含む中国とインドの2国間関係は、2017年のドクラム危機以来悪化の一途をたどり、1970年代以降最悪の状態にある。2020年のガルワン渓谷での衝突は、大規模な国境危機へと発展した。中国・インドの抑止均衡がインド・パキスタンの均衡と比べてそれほど不安定ではない理由は、核対話や危機自体がないことではなく、両国間の関係において核兵器の存在感があまり突出してないからだと主張する専門家もいるだろう。しかし、もし中国とインドが自国の核兵器をより高い警戒態勢に置いたら、現在の均衡は破られる。さらに、「一貫性のある」2国間の核抑止という概念は、新たな破壊的技術やそれ以外による通常兵器との絡み合いの役割を無視している。今後、核抑止関係はより不安定化する恐れがある。各国は、抑止力を強化するために不透明さを高める方向に進むかもしれないが、その過程で安定性を損なうことになる。その場合、核抑止関係を管理する手段としての軍備管理は、交渉、実施、施行がこれまでよりはるかに難しくなるだろう。
4. 国内要因と核のトリレンマのつながり
核のトリレンマはより大きなシステムの部分であり、そこでは政治的関係と政治的意志の産物として核の均衡がある。政治的関係は、政策立案するエリート層の思考に影響を受ける。中国、インド、パキスタンにおける核政策の立案は、主に指導者層によって決定されている。南アジアでは、国内政治における影響力は、政策や核保有国同士の2国間関係を動かす重要な要因のひとつである。中国とインドやパキスタンとの関係は、主に国内の安定性と経済成長という二つの優先事項によって動かされている。このことは、中国がインドに対し、一帯一路構想への参加を呼び掛けるなど、巧みに計算された経済的結びつきを持っている理由を説明する。中国にとって、パキスタンは新疆自治区で安定性を維持するために重要な役割を果たす。過去10年間、インドの選挙政治においてパキスタンは重要性を増している。憎悪と嫌悪の力は、両国間の紛争のエスカレーションとデ・エスカレーションに強い影響を及ぼし、特にテロ攻撃の直後はそれが顕著である。南アジアでは、政治的意志が国内政治の人質となり、政治指導者らがリスクを冒し、緊張を高め、あるいは外交的関与に抵抗し、最終的には対話の余地を狭めてしまう恐れがある。
一部の事例では、パキスタンにおいてそうであるように、軍部が国家の核兵器計画に決定的な影響力を行使し、国内権力を行使および維持する手段として軍備拡張に関心を向けていると考えられる。しかし、核兵器に対するアプローチという点では、全ての軍部が似通っているわけではない。防衛予算を食いつぶすため、核兵器の増強は望まないという軍部もあるだろう。
民主主義国家は核兵器を使用する可能性が低いと示唆する研究もある。なぜなら、国民に説明責任を問われるからである。しかし、国家の民主的資質は、核兵器が使用されないという保証にはならない。たとえ民主主義国家でも、世論が他国への核兵器使用に賛成する可能性がある。従って、核兵器が使用されるか否かを決定するのは、政治システムというより核兵器に関する規範の重要性である。インドの核ドクトリンは現在、国家安全保障は国際安全保障に依存するという信念を反映している。中国も、同様のアプローチである。しかし、南アジアにおける対話の欠如は、地域安全保障と国際安全保障に関する誤解を促進する恐れがある。
世界的に見れば、核戦争の脅威がはるかに現実味があり、差し迫っていると思われた冷戦時より、大量破壊兵器の問題に対する現在の国民の関与ははるかに低い。南アジアでは反核運動が顕著であるにもかかわらず、インドやパキスタンのような国々における核軍縮に関する議論は、いまや市民社会や戦略エリート層の比較的小さなコミュニティーに追いやられている。これらの国々の一般国民にとって、日々の生活の圧倒的な困難を前にすると、核の脅威は取るに足りないものなのである。従って、パキスタンで近頃発表された国家安全保障政策について、(批判という形ではあるが)国民が関与したことは非常にまれなことであり、市民社会や学界が国家安全保障の問題について政府に説明責任を求めた一例である。
5. 外部アクターの役割
3カ国間の安全保障上の連携、そして外部勢力とのダイナミクスは、世界の規範的核秩序に重要な影響を及ぼす。三つの核武装国のうち2カ国は核不拡散条約(NPT)に加盟しておらず、3カ国とも核兵器禁止条約(TPNW)に署名していない。欧州・大西洋地域の比較的よく整備された核軍備管理および危機管理メカニズムに比べ、南アジアには、地域の核関係を統制し、方向性を定める制度的構造がない。
外部アクター、具体的には米国とロシアは、南アジアの安全保障ダイナミクスにおいて重要な役割を果たす。米国は地理的に南アジアの一部ではないが、地域に対する影響力、方向性、関心を持っている。米国はまた、過去のインド・パキスタン危機における重要な調停者でもあった。南アジアの情勢、特に核の情勢にとって、米国の影響は3次的なものだという見方もある。しかし、核の鎖において、米国の戦略能力に対する脅威認識は、中国の核兵器能力の拡大と配備状況の背後にある重要な要因である。バイデン政権のインド太平洋戦略も、中国に、脅威認識に対抗しなければならないというさらなるプレッシャーを与えている。
米国のいわゆる「中国封じ込め」は、インド太平洋地域に重大な影響を及ぼすと予想される。南アジアや東南アジアの国々がこの大国間の競争に対して、自国の経済的利益と安全保障上の利益のバランスを取ろうとしている状況ではなおさらである。アフガニスタンからの撤退、イラン核合意、オーストラリア・英国・米国(AUKUS)パートナーシップ、日米豪印戦略対話(QUAD)に関する米国の行動は、南アジアにおけるトリレンマを固定化する恐れがある。中国は、米国の戦略的支援によってインドが増長し、中国とパキスタンに対してより挑発的な姿勢を取り、南アジアの地域安定性を脅かすと考えている。
ロシアも、南アジアの安全保障ダイナミクスに直接的および間接的に影響を及ぼす。ロシアはこれまで、米国との対立関係を南アジアの安全保障ダイナミクスに持ち込むことには消極的であった。今後もこの立場を維持すると思われる。しかし、ウクライナ危機に先立って歴史的な共同声明で発表されたとおり、ロシアと中国の「無制限」のパートナーシップが今後どのように発展していくのか、また、それが南アジアにおける3国間関係にどのような影響を及ぼしうるかについては、注意を払う必要があるだろう。
急速に変化する国際情勢も南アジアに影響を及ぼしている。AUKUSや、2004年12月インド洋津波後の人道的災害救助支援における4カ国の海軍協力に端を発するQUADのような新たな地政学的連携は、地域にとって軍事的意味合いを有している。インドがパートナーとなっているQUADやAUKUSの形成は、インド太平洋地域の主な戦域が海洋となることを示唆している。穏健な地経学的連携として宣伝されている中国の一帯一路構想も、支配の手段に変容する可能性をはらんでいる。QUADと同様、一帯一路構想も、開発・経済協力に加え、戦略・安全保障課題を取り上げている。これらの新しい絡み合いは、世界と地域の平和にも、2国間関係にも影響を及ぼす。
6. 合法性、戦略的安定性、相互脆弱性
中国にとって、インドとパキスタンは、NPT体制に参加していないため、非合法な核武装国である。中国の立場から見ると、核武装したパキスタンとは平和的に共存できる。パキスタンは、中国に危害を加えるつもりがないからである。しかし、パキスタンが他国の核開発を支援することは脅威となりうる。中国と同様、インドも、自国を世界の核秩序における特別なケースと考えている。この例外論的感覚は、世界の核秩序がNPTに基づく適合とヒエラルキーのみを基盤とする絶対的なものではありえず、非西洋的な概念や言説にもっと歩み寄ったものであるべきだというインドの理解に起因していると、一部の人は言うだろう。
南アジアの核のトリレンマをより深く理解するためには、冷戦時代の規範的秩序というプリズムを脇へ置く必要がある。なぜなら、現在の安全保障課題は冷戦時代のそれとは根本的に異なっており、代理戦争とイデオロギー問題は領土問題や主権問題、非国家アクターによる脅威、破壊的技術に取って代わられているからである。冷戦時代、戦略的安定性は2国間の核の安定性という文脈で定義されており、核の安定性は等価性と相互脆弱性の上に成り立っていた。このような理解が、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約といった軍備管理条約の土台となったのである。
新たな世界の核秩序において、戦略的安定性を再定義する二つの要素がある。核兵器と通常兵器の「絡み合い」と、戦争の連鎖的特性である。戦略的安定性は、単なる核の安定性だけではなく、それ以上の不安要因やアクターを含んでいる。南アジアでは、武装ドローン、サイバー兵器、精密誘導兵器、宇宙開発といった新たな軍事技術が、戦略的安定性に影響を及ぼす。NPTによる核兵器国の定義も、時代遅れである。今日区別するべきは、自国の安全保障のために核兵器に依存する国々と、核兵器に依存しない国々である。核兵器に依存する国々は、事実上、核兵器国であると主張する人々もいる。現在の状況に見合った理解をするために、核兵器国に関する問題と戦略的安定性の問題を、冷戦時代の定式とは別の形で捉える必要がある。
新たな核秩序において、核抑止の安定性はもはやパリティと相互脆弱性の上に成り立っていないと言えるだろう。相互脆弱性の基盤は、1983年にロナルド・レーガン米大統領の戦略防衛構想によってひずみが生じた。米国は、2002年にABM条約から脱退したときにはすでに、相互脆弱性という概念の先に進み、担保された安全保障を目指す政策に向かっていた。これが、ポスト冷戦時代に米国・中国間の対話が欠如している理由の説明となるだろう。しかし、安全保障を担保するということは常に困難な課題である。なぜなら、常に技術が防衛を突破し、エスカレーションや核兵器使用の誘因となり、軍拡競争に拍車をかけるからである。
7. 信頼醸成措置(CBM)
核の均衡は今日、特に破壊的技術とデュアルユースシステムを考慮に入れると、冷戦時代の2大国関係より複雑化している。従って、米ソ時代の弾頭数ばかりを数えるような軍備管理のやり方はもはや、特に南アジアにおいては通用しないだろう。そうであれば、信頼と信用を構築する新たなアプローチによって、政治情勢の変化を背景とする脅威認識、実際の脅威、新興技術、そして、非国家アクターなどの新たなアクターに対処するべきである。これらの要因を取り込むために、既存のCBMや確立された標準的な運用手順の拡張を検討するべきである。
強大な国が弱小国に一切譲歩しない状況では、CBMの交渉は困難である。パキスタンは、通常の脅威を相殺するために核兵器に依存している。パキスタンが核のレッドラインを明確にすることはないだろうが、その全範囲抑止ドクトリンは、攻撃を抑止し、あらゆる戦争を防止するためのものである。2021年3月に行われたイスラマバード安全保障対話の重要なスピーチにおいて、パキスタン陸軍のカマル・ジャビド・バジュワ参謀長が、イスラマバードにはインドとCBMに関する協力を行う用意があることを示唆した。
南アジアでは、核をめぐるCBMの多くがインド・パキスタン間の宣言的声明や2国間合意という形を取っている。インドとパキスタンの間に、検証措置は存在しない。しかし、宣言的合意は、政治的関係における雪解けを示唆するものである。核兵器、通常兵器、新技術に関連するCBMに幅広く対応する全体的なアプローチが必要である。これは特に、人工知能(AI)やサイバー兵器のような技術によって、平時から戦争への移行がより容易になるためである。国連軍縮研究所(UNIDIR)は、核リスク低減に取り組んでおり、破壊的技術がいかにインド、中国、パキスタンの均衡に不確実性をもたらすかについて検討を行っている。
核問題に関する対話とコミュニケーションの不足は、南アジアにおける深刻な課題である。特に、南アジアにおける近頃の危機(2019年にインド・パキスタン間、2020年にインド・中国間)を背景に、コミュニケーションの欠如から他国の意図を読み誤る可能性が高くなるだろう。今後、紛争に海洋的側面が生じれば、より広範な地域における安全保障アプローチを概念化する妨げとなるだろう。そのため、南アジアに海上通信リンクを設置することを真剣に検討する必要がある。現在、中国、インド、パキスタンの間でそのようなリンクは運用されていないからである。
政策提案
南アジアにおけるリスク低減措置と信頼醸成措置は、何よりもまず、紛争をエスカレートさせそうになる衝動、コミュニケーション不足、事故や不注意による核の応酬の危険に対処するものでなければならない。
地域の専門家は、中国、インド、パキスタンの指導部に向けて政策提案を行った。その目的は、実際的な核リスク低減、危機安定性、信頼醸成措置を模索すること、そして、緊張緩和と紛争解決のためのメカニズムや機会を明らかにして関係を正常化することである。これらの提案は、南アジアにおける多国間の核兵器削減プロセスや核規制体制を検討する機会も提供する。
2国間/多国間対話: 中国、インド、パキスタンの間で核問題に関する対話が欠如していることは、地域における抑止の安定性を妨げる深刻な要因となっている。インドと中国の2国間対話を確立し、インドとパキスタンの対話を再開することは、脅威認識、ドクトリン、核行動をよりよく理解するために不可欠である。対話には、軍幹部の直接会合(共同作業部会の形で)により共通の問題に取り組み、破壊的技術の影響を評価することも含めるべきである。情報交換によって、指揮権の所在に関する混乱や原因不明の放射線事故に対処することができる。また、既存制度の政治的ホットラインや軍事ホットラインも活用して、誤認や不注意によるエスカレーションの可能性に対処するべきである。海軍対話は、平時および戦時に各国海軍がどのように行動するかを理解するために不可欠である。
南アジアにおける戦略的リスク低減: 中国、インド、パキスタンの通常軍事力と核軍事力の両方を対象とするリスク低減措置は、まず、機密性は低いが緊急性のある課題から公式レベルで策定することができるだろう。これには、核戦争勃発のリスクを低減する多国間関与(米国とソ連/ロシア間のレーガン・ゴルバチョフ合意や、より最近では5つの核兵器国間の合意に類似するもの)が含まれる。これらの課題には、政治レベルと軍事レベルの両方で対処するべきである。インドとパキスタンの2国間リスク低減措置は、両国間で交わされた1999年ラホール覚書の精神に沿うべきである。また、2国間および多国間リスク低減措置は、将来の紛争や領土問題の引き金となる可能性をはらむ、水資源や漁業資源などの共有資源にも取り組むべきである。米国は、このようなリスク低減措置の一部を促進する役割を果たすことができるだろう。しかし、実効的であるためには、米国は、地域における安定性の促進が全ての国の利益になることを明確に述べた合意を北京と取り結ぶ必要があるだろう。
既存の2国間合意の更新: インド・パキスタン間の核事故通知に関する合意を更新し、通知要件の運用性を高めるために公式なメカニズムと制度的慣行を確立するべきである。1988年にインドとパキスタンが締結した相互攻撃禁止協定は重要な2国間CBMであり、これを更新して、両国の新規施設を対象に含めるべきである。同様の相互照準解除協定をインドと中国の間で検討することも考えられる。そのような協定を拡大し、最終的には他の国も加えることが可能であろう。
海軍間のCBM: 海上通信リンクや海軍対話のような海軍間のCBMは、平時および戦時に各国海軍がどのように行動するかを理解するため、また、水害や気候災害の脅威に関する情報交換のために不可欠である。対話プロセスがなければ、海上での衝突が起こる可能性が高い。インド・パキスタン間、インド・中国間にトラック2レベルの海上事故防止協定や海上通信リンクを締結することに関心が向けられているものの、公式な検討はいまだなされていない。3カ国全てが近い将来海軍力を増強する予定であることから、海上での衝突や紛争エスカレーションを防ぐために、3国間の海上事故防止協定を検討するべきである。
非警戒態勢または低警戒態勢の公式化: インドとパキスタンの兵器システムは、現在配備されていない。通常軍備増強の場合にのみ、警戒態勢が変更される。同様に、中国の核兵器システムも低い警戒態勢に置かれていると考えられる。しかし、政治的あるいは技術的情勢により高い警戒態勢への移行が必要になれば、事故または不注意による核応酬のリスクが高まる。南アジアにおける非警戒態勢または低警戒態勢の公式化は、それが意図の認識に結び付くため、核武装国の間で真っ先に交渉するべき合意である。それが、3国間の危機安定性を強化する有意義なステップとなる。
先制不使用(NFU)協定: NFU態勢は、核応酬を防ぐために最善の一次保証となりうる。九つの核保有国のうちNFU態勢を核政策としているのは、中国とインドの2カ国のみである。そのため、中国・インド間の核に関する相互核信頼醸成を促しうる要素として、NFUが挙げられることが多い。中国とインドは、専門作業部会を設け、南アジアに戦略的安定性をもたらす手段として2国間NFU協定について話し合うことができるだろう。ただし、そのためには、両国が自国のNFU政策を明確にし、改めて明言すること、中国がインドの核兵器保有国という立場を受け入れることが必要である。パキスタンは、通常の軍事攻撃に対する核抑止に依存していることから、NFU政策を採っていない。中国・インド間のNFU協定とインド・パキスタン間の核施設攻撃禁止協定を併せることで、恐らく、南アジアにおける3国間NFU協定の範囲と可能性について、中国、インド、パキスタンの3者協議を行う道が開けるかもしれない。パキスタンの重要な戦略パートナーとして、中国は、これらの協議に参加するようパキスタンを説得する重要な役割を果たすことができる。
危機管理および非常事態管理メカニズム: 自然災害、公衆衛生上の非常事態、越境犯罪といった不測の事態に協調的に対処するため、地域規模の危機管理および非常事態管理メカニズムを開発することができる。このようなメカニズムの一環として、3カ国の文民法執行機関と軍事法執行機関の公式対話を設置することが考えられる。足掛かりとなる既存の慣行はあるが、それらは2国間対話であり、多国間メカニズムに拡大することが考えられる。これらの措置は核のトリレンマの出現を防ぐものではないかもしれないが、最悪の事態を予測し、回避するために役立つだろう。
ベストプラクティスの共有: 3カ国は、それぞれのセンター・オブ・エクセレンスを通して、核安全性と民生用原子力施設のセキュリティーに関するベストプラクティスを共有するべきである。核安全保障サミットのほか、ジュネーブ軍縮会議などの3カ国全てが参加する多国間フォーラムで得た教訓や学習事項について、3国間で話し合うことができる。大量破壊兵器のほかにも、3カ国は、宇宙向けシステムやスペースデブリ、サイバー兵器、自律型致死兵器、極超音速、デュアルユース・プラットフォームなど、他の軍事的および非軍事的戦略技術に関するガイドラインについても検討するべきである。多国間イベントのサイドイベントとして、3国間の公式会合を発足させ、定期開催することも考えられる。
政治家と公衆の教育: 核兵器の現実的なリスクと抑止崩壊のリスクについて、政治家たちを教育し、頻繁に思い出させる必要がある。アート、映画、文学のような大衆文化を活用して、指導者や公衆にこれらのリスクを意識させることができる。意思決定者が十分な情報を得た上で決定を下すことができるよう、信頼できる研究や確かな情報を利用できるようにするべきである。
核兵器と他の実存的脅威の関連性: インドとパキスタンの間でたとえ限定的でも核兵器が使用されれば、気候変動の速度を含め、世界全体に影響が及ぶ可能性が高いことを示唆する科学的証拠がある。現在の核戦略は、このような気候変動との横断性を相容れるものと見なしておらず、各国政府はこれに対処することに関心がない。そのため、複数の実存的脅威の間にあるリスクと関連性について、公衆の想像力を引き起こすことが重要である。核兵器の使用とそれが気候変動に及ぼす影響の危険性を浮き彫りにするために、市民社会とメディアが重要な役割を果たしうる。
別紙1: 研究発表会参加者一覧
中国、インド、パキスタンの「核のトリレンマ」を管理するために
核不拡散・軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)と戸田記念国際平和研究所による共同プロジェクト
2022年2月18日(金)および21日(月)
阿部信泰大使
元国連事務次長(軍縮担当)、元外務省軍備管理・科学審議官
サルマン・バシール大使
元パキスタン外務次官、元在インド・パキスタン高等弁務官
トビー・ダルトン博士
カーネギー国際平和財団(ワシントンD.C.)核政策プログラム共同ディレクター、上級研究員
ダウム・ヤン(Dawoom JUNG)
核不拡散・軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)広報責任者
フェローズ・カーン准将
パキスタン陸軍退役准将、海軍大学院(モントレー)国家安全保障研究科研究教授
タンビ・クルカルニ博士
核不拡散・軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)政策フェロー
ロウ・チュンハオ博士
中国現代国際関係研究院(CICIR)南アジア研究所副所長兼研究准教授
プラカシュ・メノン中将(博士)
インド陸軍退役中将、タクシャシラ研究所戦略研究プログラム・ディレクター、元インド政府軍事顧問
マンプリート・セティ博士
空軍力研究センター(CAPS)(ニューデリー)特別研究員、APLN理事
シェン・ディンリ教授
復旦大学国際研究所教授、ワシントン大学(セントルイス)名誉客員教授
シャタビシャ・シェティ(プロジェクト共同ディレクター)
核不拡散・軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)事務局長
ラケッシュ・スード大使
元軍縮会議インド大使、核不拡散担当首相特使、オブザーバー研究財団(ニューデリー)特別研究員
サディア・タスリーム
クエイド・イ・アザーム大学防衛・戦略研究学科講師
ラメッシュ・タクール教授(プロジェクト共同ディレクター)
戸田記念国際平和研究所上級研究員、クロフォード公共政策大学院(キャンベラ)名誉教授、元国連事務次長補、国連大学(東京)上級副学長
WPS・シドゥ博士 (プロジェクト共同ディレクター)
ニューヨーク大学プロフェッショナル教育学部(School of Professional Studies)国際問題センター実務家准教授(Clinical Associate Professor)
ジンドン・ユアン博士(Dr Jingdon YUAN)
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)アソシエイトシニアフェロー、シドニー大学政府・国際関係学部国際安全保障担当准教授