オンライン・シンポジウム「先端技術兵器の規制を考える2―科学史が提供する視点」を開催
7月21日午後7時から、戸田記念国際平和研究所が主催し、「安全保障と先端技術プラットフォーム(PSET)」の共催による、オンライン・シンポジウム「先端技術兵器の規制を考える2―科学史が提供する視点―」が開催されました。
科学技術の発展は、兵器の能力の飛躍的な向上を可能にし、国家の安全保障にも多大な影響を与えてきました。一方で、軍民両用(デュアル・ユース)技術の重要性も指摘されており、軍事技術への規制は民生技術の活用にも影響を与えることが懸念されています。先端技術のもたらしうる影響を完全に予測することが困難な状況で、どのように規制を展望することができるのでしょうか。こうした問題意識から、近年関心を集めている自律型致死兵器システム(LAWS)の問題を取り上げ、科学史の提供する知見から何が学べるかについて、コメンテーターに科学者と技術者を交え現在の科学や先端技術と照らし合わせながら議論を行いました。
米ペンシルベニア大学大学院博士課程で科学技術史を専攻するピースボートの畠山澄子氏は、科学は社会から中立ではあり得ないという「科学の社会性」に言及し、「複雑性」と「不確実性」を有する問題に取り組むために、科学技術の知識や技術の形成、循環、応用、使用というプロセスに目を向ける必要があることを指摘しました。そして高度な科学技術が孕む高い不確実性の中で「謙虚」であること(technologies of humility)という考え方に触れ、リスク社会において科学者がどのような責任を果たせるかについて述べました。
広島大学教授で日本パグウォッシュ会議代表の稲垣知宏氏は、宇宙物理学、生命科学、情報科学を事例としつつ科学における「知」がどのように発展してきたかについて述べ、今日の研究の現場は複数の研究機関や企業がネットワークを構成していることを指摘。そうした環境下で科学者ができること、また「科学が答えを出さない」問題に関する科学者の役割について述べました。
明治大学POLARIS(市民社会と科学技術政策研究所)軍民両用・融合技術研究ユニット代表の平田知義氏は、軍事革命を引き起こしたとされる核兵器とAI兵器を比較しつつ、両者の単純な比較がもたらす問題点を指摘。先端技術兵器に関わる軍事技術は必ずしも「最先端」なものではなく、今日では民生技術は様々に軍事転用されている事実があることから、兵器の規制に関する議論においても技術を理解し問題の本質を多角的に捉える必要性と先端技術兵器に関する問題提起や規制に向けた議論に市民技術者(ホワイトハッカー)を参加させることの有効性と重要性について述べました。
モデレーターを務めた戸田記念国際平和研究所の河合公明主任研究員は、「先端技術兵器の規制を考える」とのテーマに関わる、科学技術コミュニティー、軍事・安全保障政策コミュニティー、一般社会という三つのステークホルダーの役割に言及。二つのコミュニティーの「専門知」と多様な価値観からなる一般社会の「現場知」が相互に補完し合うことが、不確実性を有する課題への取り組みの基礎となると述べました。
登壇者の発表資料とシンポジウムの模様は、以下のリンクからご覧いただけます。
*本映像は、ウェブ公開用に一部編集したものです。