Climate Change and Conflict タウキエイ・キタラ | 2024年08月01日
ツバル首相がツバル人ディアスポラとファレピリ連合条約について議論
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2024年7月13日(土)、ツバルのフェレティ・テオ首相は、オーストラリア最大のツバル人コミュニティーであるブリスベーンのツバル人ディアスポラ・コミュニティーの人々と面会した。この種の訪問は今回が初めてである。ツバル政府指導者らは首脳会合に向かう途上で(今回の場合は日本とマーシャル諸島での会合)たびたびブリスベーンに立ち寄り、ディアスポラ・ファミリーを非公式に訪問することもよくあるが、今回はツバルの首相による初めてのツバル人ディアスポラ・コミュニティーとの公式面会となった。コミュニティー・メンバーはこぞってこれを歓迎し、大勢が参加した。クイーンズランド州南東部在住のツバル人だけでなく、バンダバーグやアグネスウォーターのような遠隔地から来た人も数名いた。また、参加者の中にはツバル人のPALM(太平洋オーストラリア労働移動制度)労働者もいた。
面会の目的は、ツバル政府とオーストラリア在住ディアスポラとの対話を深めることである。メディアに向けた場ではなく、ツバル人が議論に参加し、ツバル文化をたたえる機会となった。
議論のトピックの一つは、オーストラリア・ツバル・ファレピリ連合条約だった。この条約は、気候変動への適応、安全保障、ツバル人をオーストラリアに受け入れる新たな移住制度を支えるツバル・オーストラリア間の新たな取り決めを盛り込んだものである。「ファレピリ」という言葉は、ツバル語で「隣人」を意味する。ツバルはオーストラリアに対し、オーストラリアがツバルのような隣人を心から気遣い、ツバルが気候変動の影響に適応するのを支援する用意があることを示して欲しいと望んでおり、その点で、条約にこの言葉が使われたということは重要な意味を持つ。テオ首相は条約文を見ていないディアスポラのツバル人のために、条約の各条項を詳細に説明した。ファレピリ連合条約は議論の焦点となり、首相は、条約によって年間280人がオーストラリアの永住権を申請できるようになると説明した。
ツバル人ディアスポラ・メンバーらは、首相訪問中、新たなファレピリ連合条約の移住制度について詳しく知りたいと要望した。オーストラリアの永住権を持っていないがすでにオーストラリアに在住しているツバル国民も、近々発効するファレピリ連合の移住制度を通して永住権を申請する資格ができるだろうとの説明がなされた。
ブリスベーンのディアスポラとの面会は、ツバル議会における最近の議論で、政府がファレピリ連合条約についてツバル人コミュニティーと話し合う意向であることが明らかになったのを受けて行われた。その議論はツバル国内から始まった。オーストラリアのツバル人ディアスポラ・コミュニティーで、今回の首相訪問の後にファレピリ連合のみを主題とする話し合いが再び行われるかどうかは不明である。
テオ首相は、ファレピリ連合条約はまだ批准されておらず、批准が実現する前にツバルとオーストラリアの両国が果たすべきことがあると説明した。両当事国が条約の履行方法について不満がある場合、ツバルかオーストラリアのいずれもが脱退することができるという条項があることが説明された。ファレピリ連合条約はこの種の条約としては初めてオーストラリアがツバルと締結しようとしているものであり、それを受けて、他の太平洋島嶼国も同様の協定をオーストラリアと結ぶことに関心を示すようになっている。首相に対する質問、というより要請として、「ツバル政府は、オーストラリア永住権の280人の枠の一部を、すでにオーストラリアにいるがオーストラリア居住者ではないツバル人に割り当てることを考えているか?」という問いがあった。2番目の質問は、「政府は、ファレピリ連合条約に基づく280人のビザ枠の一部を、ニュージーランドに住んでいるがニュージーランド永住権を取得していない、または不法在留しているツバル人に割り当てるか?」である。首相は、そういった問題は重要であり、これについては閣僚とさらに議論すると認めた。彼は、ファレピリ連合条約が全てのツバル人を対象にしており、住んでいるのがツバル国内でも国外でも、ツバル国民である限り誰でも申請できると強調した。首相は、オーストラリア永住権を付与されたツバル人はツバルとオーストラリアの間を何の制約もなく行き来することができ、オーストラリア永住権を持つツバル人がオーストラリア国外に滞在する期間についても制約はないことを力説した。
また、テオ首相は、選挙により新政権が発足した直後の2024年初頭にツバル政府が4カ年計画として発表した21の優先事項についても論じた。21の優先事項についてコミュニティーからのコメントやフィードバックはなかったが、開発計画の透明性を高めるために新政府が行っている努力や取り組みに対しては、承認や称賛の言葉も聞かれた。コミュニティーは、これらの優先事項が政権任期の4年以内に遂行されることを期待し、その恩恵がツバル国内の人々だけでなく国外に暮らすツバル人にももたらされることに感謝している。
ミーティングは、ファテレ(ツバルの伝統的な歌、太鼓、踊りの披露)、テオ首相のフェヌア(地元)であるニウタオ島出身のブリスベーン在住者たちが用意した宴によって締めくくられた。
タウキエイ・キタラはツバル出身で、現在はオーストラリアのクイーンズランド在住。グリフィス大学のグローバル開発学修士課程を終え、同大学の社会・文化研究グリフィスセンターで非常勤フェローを務める。ブリスベーン・ツバル・コミュニティー(Brisbane Tuvalu Community)の代表(2019年~2022年)、クイーンズランド太平洋諸島評議会(Pacific Islands Council for Queensland/PICQ)の評議員を務めた。