Cooperative Security, Arms Control and Disarmament ハルバート・ウルフ | 2025年07月26日
トランプのBRICSに対する関税攻撃
トランプの関税政策がBRICSを減速させているのか、それとも加盟国の多様性ゆえに同盟は勢いを失いつつあるのか?
2025年7月6日、7日にブラジルで第17回BRICS首脳会議が開催されるのに合わせて、米国のドナルド・トランプ大統領が同盟を名指しして、「BRICSの反米政策に同調する国には10%の追加関税を課す」と脅した。この反米主義とされるものが具体的に何を意味するのか、トランプは説明しなかった。現在の加盟国10カ国とパートナー国のほとんどは、トランプの威嚇に対して反発と冷静さをもって反応したが、困惑もしていた。
ブラジル、中国、インド、トルコの4カ国と彼らの反応を見てみよう。前述の10%に加えて、トランプはブラジルに対してさらに50%の追加関税を課すと脅している。これは、ジャイル・ボルソナーロ元大統領が2023年1月にクーデターを企てた罪で裁判にかけられているからである。トランプは、「この裁判は行われるべきではない。これは魔女狩りであり、ただちに終わらせるべきだ!」と投稿した。ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は少しも動じず、トランプを「皇帝」のように振る舞っていると非難した。彼はただちに相互主義の原則に基づく措置を発表し、トランプの要求を「受け入れ難い脅迫」として退けた。ブラジルでは、米国の政治に対する怒りが高まっている。何の権利があって米国の大統領がブラジルの政治に干渉するのか?とはいえ、米国がブラジルにとって重要な貿易相手国であることに変わりはない。そのため、ルーラは交渉を求めたが、敬意と対等な立場に基づく場合に限った。ブラジルと中国の政治的・経済的関係は、重要性を増しつつある。ブラジルは、他のパートナーを模索することによって、貿易依存と威嚇から身を守ろうとしている。
中国は、BRICSグループの中で経済的にも政治的にも重鎮である。同国は、BRICS首脳会議よりはるか以前から米国の関税政策の焦点となっており、WTO規則で認められている抵抗と、対抗措置を組み合わせて対応してきた。中国は、米国の「一国主義、保護主義、関税による経済的いじめ」を非難している。中国の反応を受けて、米国は一時的に交渉に応じる姿勢を見せた。経済的混乱が予想されたため、トランプ政権は「休戦」に合意した。大胆に繰り出された鏡写しのような中国の対抗措置は、中国の経済的潜在力ゆえに、米国にとって深刻な要因である。両国は、90日間限定で特定の関税率を引き下げた。中国政府は、対等な立場に基づく場合にのみ関税取り決めに関する交渉を行うと強調した。同時に、中国は他の多くの国と同様に、既存の輸出経路を意図的に強化し、新たな貿易相手国を模索している。
インドは恐らく、BRICS同盟の中で最も重要な例外的存在だろう。他の多くの国と異なり、インドは中国への依存を避けるため、対中関係をこれ以上拡大することに関心を示していない。インドと中国の関係は、(特にアジアにおいて)競争と対立によって特徴づけられている。ヒマラヤ地域におけるインドと中国の未解決の国境画定問題は依然として続いており、最近では2020年に双方に死者を出す軍事衝突へと発展した。
とはいえ、米国との関係は過去20年の間にますます密接になっており、米国はインドを中国とのライバル関係におけるパートナーと見なしている。米国とインドは、安全保障政策や軍備面で協力さえしている。トランプが、BRICSが米ドルへの依存を減らすかもしれないと怒りを表明したとき、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は、インドは「ドルを弱体化させることに全く関心がない」と断言した。なぜなら、インドはドルを中国人民元に置き換えることに全く興味がないからである。これまでのところ、独自の通貨を導入するというBRICSの本来の野心は実を結んでいない。BRICS加盟国は、お互いの国の通貨に対する信頼を欠いている。インド政府の立場は複雑である。米国との関税摩擦については交渉によって解決することに全面的に取り組んでいる一方で、特に2026年にインドがBRICS首脳会議の開催国となることから、他のBRICS加盟国と疎遠になることも望んでいない。
トルコはBRICS加盟国でもパートナー国でもないが、2024年9月に加盟を申請している。同時に、トルコは依然として西側諸国との同盟、特にNATO加盟国としての立場を堅持している。BRICSへの加盟が認められれば、トルコは初のNATO加盟国によるBRICS加盟国となる。このような政治的二面性は、トルコ政府にとって明確に意図されたものであり、西側と東側、あるいはグローバル・サウスとの間で戦略的な位置を取る政策を反映している。巧みな地政学的な外交政策により、トルコは近年、国際的な影響力と威信を高めることに成功している。
特に中国との関係が強化されており、2016年以降、中国とトルコの間にはドルに対してそれぞれの通貨を強化することを目的とした通貨協定が存在している。このように、トルコは政治的な自由度を拡大するための政治的目標と、経済的目標の両方を追求している。トルコは経済危機に直面しており、BRICS内の協力を通じて新たな輸出機会を積極的に模索している。同時に、国内への投資をかなり効果的に促進しており、NATOやEUのような西側のパートナーに対して、トルコが選択肢を持っていることを明確に示している。トルコの正式なBRICS加盟はまだ決まっていないものの、トルコはすでにこの枠組みを活用し、自国の外交・貿易政策の独立性を示している。
G7諸国に代表される西側諸国は、経済面でBRICS諸国に後れを取っている。それにもかかわらず、新たな世界秩序というBRICSの掲げる形はあまり残っていない。BRICSは、一致団結した同盟あるいはブロックというにはほど遠い。BRICS加盟10カ国のうち、ロシア、中国、イラン、そして恐らくはエチオピアのみが明確な反米姿勢を共有している。ブラジルと南アフリカ、そしてインドは、米国との良好な経済的・政治的関係を維持することを望んでいるが、どんな代償を払ってもというわけではない。新加盟国のエジプトとアラブ首長国連邦は、安全保障政策上の諸課題において米国と密接な同盟関係にある。インドネシアはインドと同様、米国と中国のいずれにも依存しないことを目的とした非同盟の均衡外交政策を追求している。
先の首脳会議に中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が欠席したことは、BRICSが掲げる政治的アジェンダが勢いを失いつつあることを反映している。プーチンの報道官は、欠席の理由について「一定の困難」を挙げ、プーチンに対する国際刑事裁判所の逮捕状が出ているため、ブラジルで逮捕されるリスクを指していると説明した。
習近平の欠席は、明確な政治的メッセージを送るものとなった。中国の国家主席がBRICS首脳会議を欠席するのは、就任以来これが初めてである。中国はこれまで、その政治的存在感と経済力によってBRICSの先導役になっていた。BRICSの共通通貨も西側に対抗するモデルもいまだ実現していないため、中国はもう興味を失ったのだろうか?それとも、トランプの横暴な関税政策が、むしろBRICSの結束を強める可能性があるのだろうか?2024年のBRICSの拡大は、BRICS圏の潜在力を広げたかもしれないが、同時にBRICS加盟国間の相違点も浮き彫りにした。このようなBRICSの現状を受けて、西側のメディアはこの首脳会談を「分裂した国々の会合」と呼んでいる。
ハルバート・ウルフは、国際関係学の教授であり、ボン国際紛争研究センター(BICC)元所長である。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学・開発平和研究所の非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所の研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会の一員でもある。