Global Challenges to Democracy ジョーダン・ライアン  |  2025年01月30日

民主主義のリーダーから独裁主義の見本へ: 米国の後退が世界に与えるインパクト

Image: PEPFAR display, George W. Bush Presidential Library and Museum - Teresa Otto/shutterstock.com

 トランプ大統領は大量の大統領令を戦略的に連発して「情報洪水」戦術を繰り出し、民主主義のプロセスを圧倒して統治を混乱に陥れた。独裁的な傾向を反映したこのアプローチは就任当初から明らかであり、国際協定からの離脱から多岐にわたる国内政策の変更の強行まで、無数の大統領令が次々に署名されている。これらの措置は、世界の安定性と民主主義の規範を損なう恐れがあり、国際平和にとって極めて重要である国家の統治における危険な変化を示している。

 2025年1月27日、トランプ政権は、議会で承認された数十億ドルもの融資・補助金を凍結することを決定した。これは、民主的統治における憂慮すべき変更であり、世界に深刻な影響を及ぼす。行政管理予算局は、対外援助、NGO支援、環境イニシアチブなどさまざまな分野にわたる重要不可欠な財政支援を停止した。連邦裁判所がこの指令の一部を一時的に差し止めているが、これが世界の安定性と国際協力に及ぼした広範な影響は依然として深刻である。このような一方的な大統領令は、民主主義の原則の中核、特に米国議会の基礎である権力分立に打撃を与えるものである。

 米国において権力分立は、一つの政府部門が不当に大きな支配力を獲得するのを防ぐことを目的としている。「財布の権限」を付与された部門である議会は、連邦予算を配分する権限を持つ。トランプ政権は、議会の財政的決定を覆すことによって、国内プログラムを混乱させただけでなく、米国の民主主義的プロセスの安定性と信頼性に関する不穏なシグナルを国際社会に送った。

 この指令のインパクトは米国の国境を大きく越えて、極めて重要な国際保健プログラムや平和構築努力を脅かしている。特に重大なことに、命を救うHIV治療を50カ国の2,000万人に提供している米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)がこの凍結によって危機に瀕している。国務省が近頃通達した免除により医薬品供給の再開は可能になったが、他のPEPFARのサービスを継続できるかどうかについては疑問が残る。同様に、マラリアおよび結核の治療・予防プログラムも停止に直面しており、国際保健における数十年の前進が無になるリスクにさらされている。

 混乱は公衆衛生分野に限らない。紛争解決や紛争後の復興のために米国国際開発庁(USAID)の資金に依存しているアフリカ、中東、東南アジアのNGOは現在、活動の縮小や停止に追い込まれている。このような縮小により、脆弱な地域に危険な権力の空白が生まれ、長年にわたる忍耐強い平和構築の努力が損なわれる恐れがある。

 こうした行政権限の濫用は、世界中の民主主義国に見られる、より広範な懸念すべき傾向を反映している。ハンガリーでは、ビクトル・オルバーン政権が権力の集中と司法の独立を弱め続けている。トルコでは、レジェップ・タイップ・エルドアンが司法に対する支配を強め、メディアの自由を抑圧している。かたやポーランドでは、与党「法と正義」が民主主義的制度を体系的に弱体化させている。このような情勢は、国内の独裁主義へのシフトが世界中に同様の動きを誘発し、正当化し、国際規範と協力を不安定化させることを示している。

 かつて民主主義的原則の道しるべと見なされていた米国政権の行動が、今や他国における同様の戦術を正当化させる恐れがある。民主主義制度が脆弱な国々は、意を強くしてチェック・アンド・バランス体制の弱体化を図り、米国の例を権力集中化への青信号と見なすかもしれない。この傾向は民主主義の規範を浸食し、世界中で独裁主義的な行動を助長するため、国際秩序に深刻な課題をもたらす。

 米国がグローバル開発における従来の主導的役割から手を引いたことで、保健プログラムや人権イニシアチブの資金を米国の援助に頼ってきた国々は、不確かな未来に直面している。このような後退は、民主主義の価値に関する国際的コンセンサスを弱体化させ、独裁政権をつけあがらせる。さらに、米国内における民主主義の衰退は広範囲にわたる影響を及ぼし、国際保健、人権、開発における米国のリーダーシップが協力の基礎となっていた国際システムを弱体化させる。現在の資金凍結は、単なる政策調整にとどまらない。多国間の関与と世界の安定性に対する根本的な挑戦を示している。

 国際社会は、断固とした対応を取らなければならない。市民社会組織、民主主義政権、国際機関は、世界平和、国際保健、グローバル開発において成し遂げられた進展を守るために、協力を強化する必要がある。民主主義の後退がもたらすリスクに対抗し、重要なイニシアチブの継続を確保するためには、積極的な対策が極めて重要である。

 米国内外における民主主義的規範の衰退は、世界の安定性の基盤を脅かすものである。協調的行動を優先し、国際システムを支える価値観を強化することによって、国際社会はこれらのリスクを緩和し、より安定した公平で公正な未来に向かう道を切り開くことができる。

  1. 政治的混乱の際に、重要な国際保健および平和構築プログラムを維持する緊急資金メカニズムを設立する。
  2. 民主主義的制度を衰退から守るための多国間支援ネットワークを創設する。
  3. 不可欠な人道イニシアチブについては、代替的な資金供給源を開拓する。
  4. 政治的圧力があっても、極めて重要なプログラムを維持することができる強靭な市民社会ネットワークを構築する。
  5. 民主主義の価値を守るため、市民社会、各国政府、国際機関の間で新たな連携を構築する。

追記: ホワイトハウスは連邦資金を凍結する覚書を撤回したが、それが発行されたことの意味とそれが作った前例は、民主主義的統治と世界の安定性に影響を及ぼし続けるだろう。

ジョーダン・ライアンは、戸田記念国際平和研究所の国際研究諮問委員会メンバーであり、Folke Bernadotte Academyの上級顧問を務める。元国連事務次長補であり、国際平和構築、人権、開発政策に豊富な経験を持つ。同氏は、平和と安全のための民主的制度と国際協力の強化を中心に活動を行っている。アフリカ、アジア、中東全域で、市民社会組織を支援し、持続可能な開発を促進するための数多くのイニシアチブを主導してきた。危機予防と民主的統治について、国際機関や各国政府に定期的に助言を行っている。