Climate Change and Conflict フォルカー・ベーゲ | 2024年01月03日
COP28 – 大きな失望とかすかな希望
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COP28の閉会会議で、サモア代表で小島嶼国連合(AOSIS)の首席交渉官を務めたアン・ラスムッセンは、「われわれが本当に必要としているのは行動の飛躍的な変革であるのに、これまで通りのやり方を少しずつ前進させるにとどまっている」と、会議成果への失望を歯に衣着せずに表明した。そして、「科学を参考にしながら、その一方で科学が命じるなすべきことを無視した合意を結ぶのでは不十分だ」と彼女は言い加えた。その言葉に、各国の代表は立ち上がって彼女に拍手を送った。
しかし、その同じ代表たちは直前にAOSISや他の人々の願いには遙かに及ばない会議最終文書を採択したのである。アン・ラスムッセンが代表を務めるサモアと他の129カ国(198カ国中)は早い段階から化石燃料の「段階的廃止」を求めていたが、会議は化石燃料からの「脱却」を呼びかけた。「脱却」という表現は、サウジアラビアのような石油国家が「段階的廃止」に強硬に反対したのを受けて妥協案として提示された。この表現は、AOSISに加盟する39カ国が会議場にいない間に採択されてしまった。彼らは、最終文書に関する立場についてまだ議論を行っていたのである。
「段階的廃止」の立場を強く支持していた太平洋島嶼国(PICs)は、COP28のこのような幕切れに失望した。それとは対照的に、会議の始まりは有望に見えた。会議初日に「損失と損害」基金を新たに設置する合意がなされ、数カ国の温室効果ガス主要排出国が基金への拠出を表明した。議長国であるアラブ首長国連邦が1億米ドル、ドイツも1億米ドルを約束した。これは良好な滑り出しに見え、会期中に他の主要排出国/富裕国が拠出の約束を表明すると期待された。
しかし、これらの期待は満たされなかった。拠出が表明されたのはわずか7億米ドルで、実際に必要な4,000億米ドルに比べれば「大海に注ぐ一滴」である(米国の拠出額は1,750万米ドル、日本は1,000万米ドルという少なさだ)。オーストラリアなど他の国々は、基金の設立は支持したが拠出金の表明は一切なかった(オーストラリアは、太平洋強靭性ファシリティに1億豪ドル、緑の気候基金に5,000万豪ドルを拠出すると表明した)。
また、基金がどのように機能するか、継続的な資金の流れ(決められた資金補充サイクル)があるのか、資金供与の優先順位は何か、最も影響のあるコミュニティーに実際に届くのかなどについて、何も明らかになっていない。基金は世界銀行が管理し、その手数料が24%(!)であることを考えると、この点で疑いが生じるのは当然のことだ。PICsや他の途上国は、世界銀行の関与に強く反対しており、環境分野における世界銀行の実績やその透明性(の欠如)に疑義を呈してきた。彼らが求めていたのは独立した基金である。
損失と損害に対する資金提供と化石燃料を段階的に廃止する必要に関するCOP28の成果は、気候変動の最前線にいるPICsや他の途上国の目から見れば失望するものだったが、COP28には多少の明るい点もあった。これらの明るい点は、大きな欠陥に比べれば確かにささやかだが、注目に値するものだ。
「COP 28気候・救済・復興・平和宣言」については言及する必要がある。COP28は、「平和」を独立した問題として初めて取り上げ、2023年12月3日は会議の「救済・復興・平和デー」となった。その日、いくつかのフォーラムやサイドイベントで気候変動と紛争、安全保障、平和との関連性についてさまざまな側面が議論されただけでなく、74の政府と多くの国際団体や国際NGOが宣言に賛同し、「脆弱性、紛争、あるいは深刻な人道的ニーズが存在する状況下での気候変動を踏まえた目標」の数々に署名した。これらの目標には、「気候への適応とレジリエンスを支える資金援助の強化」、特に「そのような状況における気候への適応とレジリエンス構築のための財源」の大幅拡大、「国の政府やローカルアクターの技術力や制度的能力の強化」、「ローカルオーナーシップ」の優先、「影響を受けたコミュニティーや政府および非政府のパートナーとの協力」などがある。その他の目標としては、気候適応プロジェクトに「紛争に配慮したアプローチ」を組み込む、「詳細かつ統合的な、ジェンダーに対応した、リスクや脆弱性のマッピングを強化する」などによって、「優良な実践やプログラム」のさらなる向上を図るものがある。最後に、署名国・組織は「協調、協力、パートナーシップ」の強化を約束した。
これらの目標は、「脆弱性または紛争による脅威や影響を受けた、あるいは深刻な人道的ニーズに直面する人々やコミュニティー、国の多くが、気候危機の最前線に立っており、それに伴うショックやストレス要因に対処し適応する資源が極めて乏しい」という評価に基づいて策定されている。言い換えれば、紛争の影響と気候変動による特に深刻な影響を受けた国や社会の間には、大きな重複がある。
宣言は、気候変動と脆弱性や紛争との関連性を明確に認識し、気候政策における紛争配慮の重要性を強調し、これまでのところ適応やレジリエンス構築のための十分な資金へのアクセスがない脆弱な紛争影響国に重点を置いている。また、宣言が、「詳細かつ統合的な」リスクアセスメント、ローカルレベルに重点を置いた多層的かつ多元的なアプローチの必要性、紛争に配慮した気候適応と気候に配慮した平和構築におけるローカルアクターの重要性に特に注意を払っていることも興味深い。実際、太平洋地域では伝統的な権威(首長、長老など)、教会、コミュニティーに根差した市民社会組織といった非政府のローカルアクターが、気候適応においても紛争解決や平和構築においても大きな役割を果たしている。
しかし、最も重要な点は、この宣言がCOPという場において提案され賛同されたということだ。これによって、気候と紛争/平和の関連性が今後最も高い国際レベルで扱われるべき問題であることが確固たるものになったのである。
マイナス面としては、この宣言が「公式な国連気候変動枠組条約(UNFCCC)交渉の外で行動を起こすよう求める非拘束的な」自発的呼びかけでしかなく、多くの国が署名せず(オーストラリアなど)、責任や活動計画は非常に漠然としたままであり、活動の資金源とする新たな資金調達手段はないことに目を向けるべきである。それゆえこの宣言は、最初の一歩として、また、気候/紛争/平和の関連性にもっと注意を払うという、少なくとも国際社会の一部に見られる政治的意思を示すものとして受け止めるべきである。それ以上でも以下でもない。従って、「この宣言が平和構築者らの望むレベルの意欲や意味を提供しないとしても、正しい方向へ踏み出す一歩である」。
しかし、この宣言の大きな抜け穴は、軍隊と戦争が気候にもたらす破壊的な影響について完全に沈黙している点である。世界中で軍隊によって引き起こされる温室効果ガス(GHG)排出への言及はなく、戦争によって引き起こされる排出への言及もなく、軍隊や戦争がいかにして気候非常事態の大きな原因になっているかには全く注意を払わず、各国政府が自国の軍隊や軍事活動の排出量を削減するという約束もない。事実、いかなる国も軍事活動による排出量の報告を義務付けられていないが、入手可能な報告は軍による排出量の増加を示している。最初の1年で、ウクライナにおける戦争は、「同時期のベルギー規模の国に匹敵する排出量をもたらした」。米軍が化石燃料による世界最大の排出源であることも忘れてはならない(米国防総省はCOP28に独自の代表者を送った)。
COPという場における気候/紛争/平和の関連性に関するさらなる議論や誓約が真の正当性と信頼性を持つためには、気候非常事態、軍隊、軍事化、戦争の関連性も取り上げる必要がある。
フォルカー・ベーゲは、戸田記念国際平和研究所の上級研究員である。