Cooperative Security, Arms Control and Disarmament モーリッツ・クット、ヤン・ホーケマ、トム・サウアー  |  2021年02月28日

核兵器禁止: ドイツ、オランダ、ベルギーの役割は?

Photo credit: Dennis van Zuijlekom/Flickr - Image depicts a possible scenario after a 10 kiloton nuclear detonation centred on Arnhem in the Netherlands.

 本論文は、核兵器禁止条約発効日に欧州の新聞数紙に、それぞれの言語で掲載されたものである<オランダのデ・フォルクスラント(De Volkskrant)、ベルギーのル・ソワール(Le Soir)(フランス語)およびデ・モルゲン(De Morgen)(オランダ語)、ドイツのシュピーゲル・オンライン(Spiegel Online)>。

 1月22日、核兵器禁止条約が発効した。核禁止条約とも呼ばれるこの新たな条約は、締約国が核兵器を開発、製造、実験、備蓄することを禁止する。同様に、核兵器の使用、使用の威嚇も禁止する。同条約の締約国は54カ国で、さらに32カ国が条約に署名している。今後さらに多くの国が参加すると予想される。同条約は、地球に対する大きな脅威、すなわち、人類と環境に壊滅的な影響を及ぼす核兵器の戦争使用を法律として禁止している。

 著者らの国の政府(ベルギー、オランダ、ドイツ)は、禁止条約の署名も批准もしていない。オランダは交渉会議に出席したが、他の2カ国は傍観していた。3カ国とも、核不拡散条約(NPT)に定められた核兵器のない世界を支持することを公式に表明している。これが容易なことではないのは明らかだが、いつまでも目標を繰り返し表明するだけでは、実現に近づくことはできない。実質的な政府の措置や公共活動によってのみ達成することができる。

 著者らは、ベルギー、オランダ、ドイツが核兵器禁止条約を支持し、適切な時期の条約参加を目指すことを願っている。そのような動きを取る十分な理由がある。第1に、これらの国の行動を、彼らが掲げる核兵器のない世界の実現という、政治的アジェンダに一致させることになる。第2に、これらの国が条約の今後の展開に影響を及ぼすことができるようになる。また、いずれの国も、世論調査で圧倒的多数が条約参加を支持していることが繰り返し示されていることから、それは国民の利益にもかなっている。最後に、それは禁止条約とNPTの相互補強にも寄与すると思われる。

 また、3カ国は特殊な立場にもある。現在いずれの国も、核共有合意の一環として自国内に米国の核兵器を配備している。核兵器を使用する場合は、ベルギー、オランダ、ドイツのパイロットが自国の航空機を用いて行うことになっている。この運用はしばしば批判されており、3カ国全てにおいて核兵器の撤去を求める国会決議がなされている。禁止条約は、核兵器の国外配備を明示的に禁止している。現在3カ国に配備されている核兵器は冷戦時代の遺物であり、軍事的有用性はないと著者らは考える。3カ国の政府は、できるだけ早く米国に核兵器の撤去を要請し、国民が核戦争に巻き込まれる可能性を断つべきである。

 NATOによる核兵器使用の威嚇に依存することで、3カ国の政府は、破滅的な影響を及ぼす非人道的兵器によって安全保障を確保しようとしている。そのような姿勢では、長期的に持続可能な安全保障を実現することはできない。NATOは、核兵器に頼らない効果的な抑止戦略について議論を始めるべきである。また、米国とロシアは、戦術核兵器を含む新STARTの後継条約について2国間交渉を開始するべきである。

 残念ながら3カ国の政府は現在、禁止条約に対する厳しい批判を表明している。この条約は、単なる象徴的手段と評されることが多く、時には国際安全保障にとって危険なものと見なされることもある。著者らの見解では、このような主張は誤っている。禁止条約は現実の法文書であり、すべての締約国がそれにより拘束される。例えば、これは核実験を事実上禁止する初めての法文書である。それに対して包括的核実験禁止条約(CTBT)は、米国と中国が批准していないため発効できずにいる。また、禁止条約と不拡散条約との間に法的不一致はない。これは、ドイツ連邦議会調査委員会による最近の報告書によって裏付けられている。同報告書において、両条約は共同の軍縮体制を構成すると見なされている。

 また、締約国だけにとどまらない大きな影響もある。年金運用基金(オランダなど)や銀行(ベルギーのKBC、ドイツのドイツ銀行など)のような金融アクターはすでに、禁止条約の直接的結果として核兵器製造関連企業からの投資撤退を検討および実行している。そして、反対派の行動を見れば、彼らが「象徴的手段」をいかに深刻に受け止めているかが分かる。2020年12月、NATOは条約に反対する声明を発表した。条約が象徴的価値しかないのであれば、なぜそうしたのだろうか?

 条約にとって最初のイベントは、発効後1年目に開催される締約国会議となる。ベルギー、オランダ、ドイツは、この機会を捉え、オブザーバーとして参加することによって禁止条約締約国と交流するべきである。そのような関与を行っても、国はまだ何の義務も負わない。しかし、それだけでも、新たな条約とその締約国に対する現在の否定的な態度からの大きな決別となる。その点で、2020年9月にベルギーで連立政権樹立の合意がなされたことは幸先が良い。より建設的な基調があれば、国際外交にとって有利になるだろう。それはまた、8月に開催予定のNPT再検討会議で実りある成果を挙げるためにも役立つかもしれない。

 結論として、西欧諸国は核兵器禁止条約を、核廃絶の約束にもっと真摯に向き合うべきだという世界の他の国々からの意思表示として受け止めるべきである。ベルギー、オランダ、ドイツは、力を合わせて国土から米国の核兵器を撤去し、政治的に可能な限り早く核兵器禁止条約に署名するべきである。

モーリッツ・クットは、ドイツのハンブルク大学平和研究・安全保障政策研究所の上級研究員である。ヤン・ホーケマは、オランダパグウォッシュ会議の議長であり、オランダの元大使、市長、国会議員である。トム・サウアーは、ベルギーのアントワープ大学の国際政治学教授である。全員が、科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議との関わりを持っている。