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協調的安全保障、軍備管理と軍縮

ワークショップ:軍備管理と世界秩序

2019年10月14日 - 15日

ウィーン(オーストリア)

2019年10月、オーストリア・ウイーンにおいて、戸田記念国際平和研究所、ノルウェー国際問題研究所(NUPI)、オタゴ大学は、「軍備管理と世界秩序」と題する研究会議を開催しました。この会議はウィーン軍縮不拡散センター(VCDNP)で行われ、軍備管理の分野を代表する米国、ロシア、欧州、中国、インド、パキスタン、日本、中東の専門家が出席しました。

10月13日から3日間にわたって行われたこの会議では、参加した専門家や外交官らが意見を交わし、過去20年間に起きた世界秩序の著しい変化は既存の軍備管理体制が崩壊する一因となっている、との結論に達しました。

世界秩序とは、国際社会における構造、ルール、権力の配分の一連の構成だと考えることができます。1945年以降、世界秩序は高密度の多国間組織体系の中で、ルールに基づく秩序、多国間主義、二極秩序の段階を経てきました。世界の経済、技術、権力配分が変化する中、文化や人々の信念・信条なども変わりつつあり、ナショナリズム(民族主義)とポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭しています。このような世界の状況においてリベラルな国際秩序を取り戻す見通しは明るくありません。新たな権力の配分には1945年以降の世界とは異なる新たなルールや機構を必要としていることは明らかです。

今回の会議では、この激動の時代において国際社会における危険を伴う力学をどのように注視していくかに焦点が当てられました。会議参加者は、国際安全保障と軍備管理が協調的に行われた過去の3つの事例を精査し、現代への教訓を得るべく意見を交わしました。

  1. 「ヨーロッパ協調」のような国際的な安全保障を統制するシステムの存在は、長期間にわたる戦争の回避を可能にしうる。

  2. 1960年代および70年代のデタント時代の事例は、軍備管理と世界秩序が進歩することで、お互いが補強し合えることを示唆している。

  3. 1980年代のストックホルム・プロセスでの信頼醸成措置の進展は、先行きの見えない状況においては限定的な段階的措置が物事を進めていく手段となることを示している。

参加者からの提案で、世界秩序と軍備管理体制についての異なる見方についても検討しました。すなわち、ロシアが自国をアジア情勢に利害関係を有するヨーロッパ・太平洋国家であるとみなした場合、世界秩序におけるロシアの立場はどのようなものになるのか、中国は米、ロシアとの三国間核協定への参加に意欲的でないこと、インドは技術の拡散を統制するための軍備管理が必要かもしれないと考えていること、などです。軍備拡大競争においては、技術が強力な推進役となることが認識されました。

さらに、21世紀における「協調」を行うための地域的および多国間組織の実現可能性や、新たな制度を整備する必要性について検討しました。主要国が既存の国際機関を活用できていないことは明らかであり、そのために、そういった機関は容易に膠着状態に陥るのです。それでも多くの国際機関、多国間および地域的組織はまだ機能しています。会議では、多国間組織は、協議の場所やサイド・ミーティングを開く機会を提供しているという観点からも、維持していくことが重要であるとの結論に達しました。

最後に、対話と研究を通して考え方(マインドセット)を変えていく方法について議論しました。考え方というものは可変的で、それを変える機会は作り出すことが必要です。未来に対する見解についての意見の一致はないかもしれませんが、我々は未来を共有しなければならないということについては意見が一致しました。偏狭で自己破滅的な自国のためだけの軍事的安全保障の追求から離れ、すべての国の利益となる協調的安全保障へ向けた根本的な転換が必要なのです。

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