21世紀に入り、世界中で民主主義の衰退と権威主義の台頭が顕著になりつつあります。民主的な制度と法の支配が、組織的に破壊されつつあります。選挙プロセスそのものが、法の支配の尊重を低下させたり、独裁的な支配を進めるために利用されています。恐怖政治は、分極化、差別、疎外、外国人排斥を引き起こしています。制度の脆弱化は、社会通念やチェック&バランスへの信頼を低下させています。「真実」という概念そのものが攻撃を受けているのです。
本プログラムの内容:
- これらの現象について、研究や執筆を通し深く関わっている世界の第一線の思想家とつながり意見を交換する。
- 気候変動やパンデミックといった人類の存続を脅かす主要な課題が、不安感の増大や政治停滞などに、いかに関与しているのかを検討する。
- 法の支配、民主的な説明責任、そして全ての人の尊厳を高めることに積極的・献身的に関わる市民社会アクターの再活性化に貢献する。
本プログラムではこれまでに、国際的に著名な学者との対話を「パブリック・カンバセーション」としてYouTubeチャンネルで公開しています。また、政策提言も発行してきました。2022年~2023年にはこの活動を推進するグローバル研究グループを設立します。
「パブリック・カンバセーション」登場者の紹介
ステファン・ハガード (カリフォルニア大学サンディエゴ校)とロバート・R・カウフマン(ラトガーズ大学)
著書「Backsliding: Democratic Regress in the Modern World」を通し、民主政治の“後退”の概念、および本書で取り上げた16の事例がどのように選定されたかについて解説した。
対談者:ケビン・クレメンツ所長、ポーラ・グリーン。動画は5部構成。
ティモシー・スナイダー(イェール大学)とノーラ・クリュッグ パーソンズ美術大学)
著書「暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン(On Tyranny: Twenty Lessons from the Twentieth Century)」イラスト版の出版にまつわる創作上の工夫やエピソードなどに触れながら、主に気候変動に起因する破滅的な危機感、富の不平等、ソーシャルメディアによる人間本能への訴求など、専制政治が台頭する要因について考察した。
対談者:ケビン・クレメンツ所長、ポーラ・グリーン。動画は4部構成。
リディア・カリル(ローウィ研究所)
「Rise of the Extreme Right: The New Global Extremism and the Threat to Democracy」の著者。「極右主義」の意味とその特徴について概説し、2016年以降の極右主義の増大を招いた構造的な要因について論じた。
対談者:ケビン・クレメンツ所長、オリビア・ストークス・ドライアー。
ジーナ・グスタフソン(ウプサラ大学・ナフィールド大学)
「Liberal Nationalism and Its Critics: Normative and Empirical Questions」の著者。右派ポピュリズムと見なされている「スウェーデン民主党」の近年の躍進と、それが同国の社会民主主義と社会保障制度にとって何を意味するのかを議論している。
対談者:ケビン・クレメンツ所長、オリビア・ストークス・ドライアー。