分断化の文脈における熟議テクノロジー、Computational Democracyと平和構築
2024年06月24日 - 27日
米国・インディアナ州サウスベンド
“分断化の文脈における熟議テクノロジー、Computational Democracyと平和構築”
2024年06月24日~27日
戸田記念国際平和研究所と米国ノートルダム大学クロック国際平和研究所は2024年6月24日~27日、「Deliberative Technologies(熟議テクノロジー)」と呼ばれる新たな種類のテクノロジーについて探求する国際研究会議をノートルダム大学で開催しました。会議では市民参加と集合知を重視した、政策課題に関する公開討論に活用できる熟議テクノロジーを用いたツールが検討されました。熟議テクノロジーとは、非常に大きな規模で人々が意見を交わし、政策アイデアを出し、両極化した意見の間で共通点を見いだす誘因を提供し、幅広いコンセンサスを得たアイデアを統合化しランク付けすることを可能にする技術です。
平和構築の分野では参加型の方法論や民主的規範が重視されてきました。民主主義と平和構築が交差する領域での文献は少ないものの、民主主義に関する研究は幅広く深いレベルで行われており、それは平和構築プロセスに役立つ情報を与えることができます。民主主義と平和構築の両分野では、分極化、ポピュリズム、民主主義の後退、世界での権威主義の台頭が課題となっています。
会議では、これまでのアナログ手法では不可能だった大規模での対話や公開審議という民主的プロセスを、いかにこの新たな技術が支援できるかが話し合われました。
熟議テクノロジーの使い方を学ぶことは、単純な技術的作業ではありません。他のデジタル・プラットフォームとは異なり、これらを使用するには複雑な社会技術的プロセスが必要となります。通常はステークホルダーのグループが特定の文脈でこのツールがどのように活用できるのかを見極め、それに合わせた設計・実験を行い、どのような質問をするか、誰を審議に参加させるのか、デジタル審議の使用と反映のプロセスをどう設計するのか等を検討する長いプロセスを経なければなりません。またリスクを認識し、さまざまな状況でこれらのツールの展開に影響を与え得る複雑な要因を分析することも必要です。
平和構築団体は熟議テクノロジーの利用に高い関心を寄せています。この研究会議は、そうした団体によるこの技術の活用に必要な知識を得たいとのニーズに応えるものでした。熟議テクノロジーの活用方法について様々なアイデアが生まれた一方で、異なる文化的背景の中でこれらの技術を利用するにはより多くの利害関係者を交えた長いプロセスが必要であることが指摘されました。今後、各団体が研究会議での検討をもとに計画を策定し、Pol.is、Remesh、Kazmといった熟議テクノロジーと協力し、実現を可能とする資金を集め、設計を進めることが期待されています。
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