中国を理解する:神話と現実
北東アジアの平和と安全保障に関する国際研究グループ
東京│2023年11月16~18日
私たちは今歴史の変曲点にいるように見えます。国際的な自由主義秩序は衰退し、国際的な勢力図も変化しています。世界は、気候変動、生物多様性の喪失、パンデミック、食糧安全保障等の新たな安全保障上の脅威に直面しています。各国はグローバルな協力を通じてしかこれらの課題に対処できませんが、世界的な分裂と対立は悪化の一途をたどっています。この状況において、中国の台頭はグローバル・ガバナンスと地域の安定に多大な影響を及ぼしています。中国は、グローバル安全保障イニシアチブ、グローバル発展イニシアチブ、グローバル文明イニシアチブを通じて、国際秩序の新たな規範を提唱しています。中国はアジアと世界における歴史的な地位を回復しつつありますが、グローバル・ガバナンスにおける中国の主導的役割を受け入れるためのグローバル秩序の再交渉が行わているのではなく、中国の台頭に抵抗し、アジアと世界の両方で中国を封じ込めようとする試みが見られます。
今後、北東アジアは紛争地帯となるリスクがあります。なぜなら、人間の安全保障を促進し、伝統的な安全保障上の課題に対処するための新たな協力的アプローチは行われておらず、現実的政治と軍事的解決策が頭をもたげているからです。この研究会議は、中国の視点をよく理解し、北東アジア地域の近隣諸国と新たな視点を共有することを目的として開催されました。
会議では、以下の問いに対して議論が行われました。
(1) 1989年以降の北東アジアとその世界的背景における主な動きは何か、2017年から2023年のG7までの期間における、この地域の各国の関係悪化はどのように説明できるのか、この地域の平和に対する主な脅威は何か。
(2) 国家および世界の安全保障、発展、文明間対話に関する中国の視点は、東アジアの平和維持にどのように貢献し得るのか、またそれらは近隣諸国の視点とどのように補完し合うか、あるいは矛盾するのか。
(3) 北東アジアでは、どのような規範、原則、理解、制度が協調的安全保障および協力的関係を促進し得るのか。この地域の国々は、平和な現在を築くために歴史問題に対処する意思はあるか。
(4) 地域紛争を非暴力で管理するための信頼、安全保障協力、紛争解決メカニズムを構築するために、北東アジア地域安全保障体制の構築を再考する時なのか。この地域はいかにして信頼を構築し、また東アジア・東南アジア諸国は海上衝突、領土紛争、核リスクをどのようにして防ぐことができるのか。
(5) 上位課題(気候変動、パンデミックなど)に対する協力の余地はあるのか、どのような制度的メカニズムが建設的な関与を促進し得るか。地域協力の構築において、共通のニーズ、願望、価値観はどのような役割を果たし得るか。
(6) この地域に安定平和を築くという共通目標の達成のために、次に行うべき最重要のステップは何か。現在の米中関係、AUKUS、QUAD、そして中国側には地域的・世界的封じ込め政策と見える動きについて、各当事者はどう見ているのか。この地域の紛争予防能力をどのように向上させることができるか。
このワークショップは、北東アジアの専門家が、中国の安全保障上の懸念や、現在の中国の外交政策・国防の立場がその懸念をどのように緩和することを意図しているのかについて、中国側の意見に耳を傾けるために企画されました。これらのプレゼンテーションの後、そうした異なる政策が韓国、日本、米国からどう見られているかについて、中国からの参加者と双方向の対話が行われました。