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民主主義の危機と課題 政策検討会議

2023年06月07日 - 09日

米国・ボストン

 

戸田記念国際平和研究所

民主主義の危機と課題 政策検討会議

2023年6月7日~9日

戸田記念国際平和研究所、タフツ大学フレッチャー法律外交大学院

マサチューセッツ州 メドフォード

 

世界各地でみられる専制政治の台頭や深刻な分極化に伴い、民主主義の衰退が加速していることを示す報告が増えています。それと同時に、カーネギー国際平和財団の最近の報告書では、過去10年間に「民主主義の光明」を目撃した32カ国を特定し、どこで、そしてなぜ民主主義へのシフトが維持されたのか、あるいは維持できなかったのかを分析しています。気候変動、移民、パンデミック、誤情報、不平等の拡大、極端な分極化の広がりといったグローバルな脅威が拡大する中、市民が参画し、有効に機能する民主主義の必要性は、一国内の課題に対処する上でも、グローバルな福祉に影響を与える課題に対処する上でも、これまで以上に重要であることは間違いありません。

2023年6月7日から9日にかけて、戸田記念国際平和研究所はタフツ大学フレッチャー法律外交大学院と共同で、マサチューセッツ州メドフォードのタフツ大学で政策検討会議を開催し、1)なぜ世界中で民主主義が衰退し、より多くの独裁者が選ばれるようになっているのか、2)さらなる衰退を防ぎ、民主主義のレジリエンス(復元力)を強化するために、政府と市民社会に対して効果的な対応策を検討することについて、戸田記念国際平和研究所がどのように貢献できるのか議論されました。この検討会議には、民主主義の研究者や歴史家、紛争解決や平和構築の分野の学者や実務家など、世界各国から12名の専門家が参加しました。

初日には、8名の参加者が、民主主義に対する現在の課題についての歴史的視点、16の事例研究による民主主義の後退の国間比較、世界的な極右の台頭、特にアメリカを中心とした分極化の進行、民主主義移行期における政治的暴力の増加の可能性などのテーマについて研究発表を行いました。続いて、インドとナイジェリアの事例が紹介されたほか、ヨーロッパにおける民主主義のレジリエンスの比較分析が行われました。このような異なる学問分野からの発表は、現在の傾向や課題について多角的な視点をグループに提供し、議論の深化につながるとともに、今後の研究に資する多くの分野を示唆するものとなりました。

続いて、民主主義を後退させる要因が相互に作用し合いながら、分極化やデマゴーグの台頭、民主主義の規範と制度の弱体化を促進し、民主主義の侵食をさらに増大させる負のフィードバック・ループをどのように作り出しているかをマッピングするためのシステム分析が行われました。こうしたフィードバック・ループを効果的に遮断するために、最適な対応策を特定することが重要です。また、より強固な民主主義のレジリエンスの実現を目的と定め、優先的に支援と強化が必要な政府と市民社会を特定する際には、別の形のシステム分析が役立ちました。これらの取り組みは、特定の国や地域の状況に適用できることに加え、今後のさらなる精緻化のための有用なフレームワークを提供しました。

現在の世界的な傾向や、研究者と実務家の立場の違いによって提起される疑問に対して、 異なる学術的視座から検討、議論されたことは大変有意義であったと言えます。今後、どのような他の学術および実務的分野を含めるべきか、また、実社会への影響の最大化を目的に具体的に焦点を当てるべきエリアを特定するために、フォローアップの議論が行われる予定です。

なお、本会議のサマリー・リポートは追って掲載されます。