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北東アジアの平和と安全保障

東京会議2019「朝鮮半島における平和の構築」

2019年02月08日

東京(日本)

東京会議2019

「朝鮮半島における平和の構築――休戦協定から恒久的平和協定への転換」

戸田記念国際平和研究所は2019年2月8日、ニュージーランド・オタゴ大学国立平和紛争研究所との共催で、「朝鮮半島における平和の構築――休戦協定から恒久的平和協定への転換」をテーマとする国際会議を東京で開催しました。

2017年は北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、「炎と怒り」で米国が威嚇して応酬しましたが、翌2018年の朝鮮半島の国際関係は改善しました。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が推し進めた南北間の平和プロセスや、2018年にあった一連の首脳会談からうかがえたのは、この改善状況を強化する機会が訪れるかもしれないという可能性でした。このことから、朝鮮半島はいかにして非核化されうるのか、朝鮮戦争の終結を正式に宣言する見通しはどうなのか、朝鮮戦争の休戦協定をいかにして恒久的な平和協定に変えるのか、の3つの中心的な課題が提起されます。

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これらの課題に対処するため、戸田記念国際平和研究所は、北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の参加国のうち5カ国の主要な代表者を招き、政府職員と民間有識者双方が参加して行う「トラック1.5協議」を実現させました。東京で開催された今回の会合は、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長の首脳会談(2月27~28日)の直前に行われ、最近の情勢に関する認識を共有し、平和の障害となるものを分析し、朝鮮半島の安定的な平和に向けた道筋を議論する機会となりました。会合では、複数の絡み合った課題の交渉にどの関係国・機関が関与すべきか、どのような優先順位で問題に取り組むべきか、交渉の進展が地域の国内政治とどのように関係しているかについて、意見交換を行いました。また、多国間協議のための適切な条件を整えるのに、欧州連合(EU)が有益な役割を果たしうるかについても検討しました。

会議では、まず6カ国協議の参加国である韓国、中国、米国、ロシア、日本の著名なスピーカーおよびEUの上級代表が意見を述べ、その他にもアナリスト、地域研究の専門家、外交官も登壇し、それぞれの見解を述べました。

韓国は文在寅大統領のもと、「核兵器を持たない」「戦争をしない」「体制転換を求めない」という三つの原則に基づいた政策を推進してきました。韓国は現在、スリートラックの手法で平和をめざす和平政策を推進しています。これは、運用的軍備管理、終戦宣言と和平協定または条約の追求、朝鮮半島の非核化を通じて実施するものです。

中国は、最近の首脳外交によって、朝鮮半島情勢が良い方向に動いていると見ています。平和と非核化という二つの問題は密接に結びついています。しかし、優先順位については見解が分かれています。北朝鮮と米国との間で論理が食い違い、相互不信があるためです。北朝鮮が核兵器を放棄できるようにするには、信頼醸成が必要です。

米国のアプローチには大きな変化がありました。冒頭、今回の首脳会談は、同盟と戦略的バランスを損なう可能性がある取り引きは避け、悪影響を及ぼさないようにすべきだと明快に主張する発言がありました。しかし、北朝鮮が本当に平和を望んでいるかどうかは不明です。真の平和、国境開放、開放的な貿易・投資が実現した場合、北朝鮮は生き残れるのでしょうか。

ロシアの考え方は、今後のロードマップは、北朝鮮を想定した軍事演習の停止と引き換えに北朝鮮側が実験を停止する形で始め、これを起点に2国間協定、さらに多国間協定に進めるべきだというものです。米朝首脳会談では米国と北朝鮮が主要当事者ですが、交渉のプロセスでは4カ国、そして6カ国にまで広げ、国連の関与も含めるべきだというものです。

日本は、エスカレートする可能性のある朝鮮半島での戦争と対立を避けること、北朝鮮での混乱を避けること、完全かつ検証可能な非核化を達成すること、の3項目を目指しています。北朝鮮が非核化を受け入れれば、日本をはじめとする各国は大規模で具体的なインセンティブを提供する準備を整えるべきです。

欧州の繁栄は、日中韓の繁栄と密接に結びついています。わずかでも不安定になれば、世界に影響が及びます。したがって、脅威を封じ込める方法を見つけ、解決策を模索することは、EUの利益にかなうものです。制裁だけでなく、開かれた意思疎通のルートを通じて対話も進めながら取り組むものです。軍備管理とともに、人権の側面に取り組むことも大切です。EUは、ロードマップを支持し、永続的な解決策を支える用意があります。EUは大規模な援助を提供している立場から、人道支援を提供する用意があります。

北朝鮮をめぐる状況は、複数の問題と複数の関係国が存在することで、潜在的に危険で複雑な紛争状態であることに変わりはありません。参加者の多くは、段階的な互恵措置のプロセスを支持しました。これは、制裁緩和、経済協力、南北朝鮮の安全保証、そして最終的には北朝鮮の国際社会への受け入れと引き換えに、北朝鮮の核兵器を停止、削減、廃絶する検証可能な措置を実施するというものです。終戦宣言と恒久的な平和条約に向けた動きは、このプロセスの重要な部分ですが、その優先順位については参加者の間で意見が分かれました。重要なステップは、核実験と軍事演習をいずれも停止することが足場になるでしょう。特定の制裁措置を解除することと引き換えに、寧辺(ニョンビョン)の核施設を閉鎖する形で取り組むことになります。今後のロードマップに合意することが優先事項です。

こうしたステップを実現させるには、関係国間の対話が不可欠です。同時に、国際社会は国際法と国際規範の遵守を支持しなければなりません。北朝鮮は国際的な義務を遵守する立場に戻らなければなりませんし、国際的な人権基準を守る必要があります。朝鮮半島の安定した平和協定に向けたプロセスは、北東アジアにおける協力的な安全保障の構造を築く機会を切り開くでしょう。朝鮮半島が非核化されれば、国際的な軍備管理と全核兵器の完全な禁止の可能性が高まるでしょう。他方、朝鮮半島で核の増強、危機、対立に逆戻りしてしまえば、地域(特に韓国と日本)や、国際的な軍備管理の可能性、そして国際的な平和と安全保障に重大な結果をもたらすことになるでしょう。

会議プログラム

第1セッション
進行役:ケビン・クレメンツ(戸田記念国際平和研究所所長)
パネリスト:文正仁(韓国・延世大学名誉特任教授(韓国大統領統一外交安保特別補佐官))、ジョセフ・ユン(大使、元米国国務省北朝鮮政策特別代表)、楊希雨(中国国際問題研究院上級研究員(中国6者会合交渉官))、ゲオルギー・トロラヤ(ロシア科学アカデミー経済研究所・朝鮮問題研究室長)、山口昇(国際大学副学長(外務省核軍縮賢人会議委員))
第2セッション
進行役:スベレ・ルードガルド(戸田記念国際平和研究所上級研究員)
パネリスト:パトリシア・フロア(駐日欧州連合大使(欧州連合中央アジア特別代表))、フランク・オウム(米国平和研究所上級研究員(北朝鮮問題))、 道下徳成(政策研究大学院大学教授(北朝鮮問題))、トン・ジャオ(米国カーネギー国際平和財団研究員(中国核政策))