2019年9月11日から13日の3日間にわたり、戸田記念国際平和研究所とオタゴ大学国立平和紛争研究所は「太平洋地域における気候変動と紛争:予防、管理、地域コミュニティーのレジリエンス(回復力)の強化」をテーマに研究会議を開催しました。この会議には日本、太平洋地域、北米、欧州の学者や政策立案者が参加しました。
この会議は前年にオークランド(ニュージーランド)で開催された太平洋地域における気候変動と紛争に関する研究会議のフォローアップとして行われたもので、「三角形」のアプローチが採られました。つまり、国際的な学者による気候変動、紛争、安全保障に関する「最先端」の研究発表が最初に行われ、続いて太平洋島嶼国の参加者からそれぞれの地域で行われた研究成果や実践的なアプローチの発表がありました。最後に、日本の発表者が国内議論の状況の概要を説明しました。
発表に続くディスカッションで取り上げられたのは、水、土地、食糧の安全保障、紛争に配慮した気候変動への適応、気候変動に起因する移住、伝統的知識の重要性、気候変動適応の文化的側面および気候変動と安全保障または紛争との関係性における文化的側面の重要性などでした。
参加者は地理的に広い範囲から集まっただけでなく、学術界、政府、教会、NGO、太平洋の地域社会などの多様な組織から参加しており、会議ではそれぞれの異なる視点を共有しました。
いくつかのディスカッションに共通して現れた課題は、気候変動がもたらす最悪の影響に対処するために、この問題に関わる人々といかにして協力関係を築いていくか、ということでした。この協力関係の構築には、人々が物事を認識するプロセスを理解すること、文化の違いを超えてコミュニケーション(意思疎通)を行うための環境を整えることも含まれます。さらに、学術界での協力、実際の体験の共有、政策についての論議が、コミュニケーションの隔たりを埋めるために最も重要だとの結論に至りました。
この課題について、戸田平和研究所のケビン・クレメンツ所長は「意思の疎通はすべての方向に対して行う必要があります。異なる文化間だけでなく学術研究や政治の領域間においても、隔たりを埋め、協力することが必要です。しかし、このような取り組みが真に役に立つためには、その協力が気候変動に対して脆弱な立場にいる人たちの適応のために向けられ、それが高い水準で行われなければなりません。これが、戸田平和研究所の目指すところなのです」と述べました。
戸田平和研究所は、この研究会議の報告書および会議の議論にもとづく 政策提言(No.74)を2020年5月に当ウェブサイトで公開しています。