ソーシャルメディアの脅威は世界中で人権、民主主義、平和に影響を与えているとの認識に基づき、戸田記念国際平和研究所は2018年12月7~9日にワシントンDC郊外にあるエアリー・ハウス・リトリートセンターで国際ワークショップを開催しました。この研究会議には、平和構築、民主主義、ガバナンス、人権分野の専門家20名が参加しました。
ソーシャルメディアをめぐる警戒すべき話題が連日のようにニュースを賑わせています。ソーシャルメディア企業が個人情報の収集と販売を行い、ユーザーのプライバシーが侵害されたこと、ロシアのトロールファーム(情報工作組織)が米国大統領選においてトランプ陣営を支援するためにアフリカ系アメリカ人の投票妨害を試みたこと、フェイスブックが民主主義、プライバシー権、二極化、ユーザーの安全に与える多大な影響という問題に関して、同社の役員が責任を先送りし、 否定し、批判をかわそうとしていること、などが報じられています。
技術楽観主義の人々はテクノロジーが世界の人をより近く結びつけると考えましたが、新しい技術は私たちのプライバシー、民主主義、社会的関係、そして平和と人間の安全保障に対し、想像すらしなかった代償をもたらしました。また、ソーシャルメディアの脅威は社会において二極化とヘイトスピーチの問題を悪化させましたが、これらの問題はソーシャルメディアによって新しく発生したわけではありません。このような以前から存在する問題は、テクノロジー業界のみで解決できる問題ではないのです。
この会議報告書では、社会の一体性、人権、暴力、民主主義に対するソーシャルメディアの脅威を述べた後、そのような脅威に対応するための創造的な選択肢を紹介しています:
- オフライン(直接対面式)対話とオンライン環境(プラットフォーム)をより密接に繋いでいく。
- テクノロジー企業がプラットフォーム設計やネット上の書き込み管理を行う技術を改善できるよう支援を行う。
- ソーシャルメディアの脅威に対処するため、シビック・テック(市民が社会・地域問題の解決のために利用できる技術)とピース・テック(平和のための技術)の活用を支持していく。
- ソーシャルメディアの脅威に取り組むため、市民社会の運動を後押しする。これは、テクノロジー企業と政府に圧力を与えることで行うこともできる。
- テクノロジー企業に対して経済的および法的な圧力を与える。
- 長期的なより良い解決策を生み出すために行うべき教育や研究を特定する。
このワークショップは、戸田記念国際平和研究所の「ソーシャルメディア、テクノロジーと平和構築」研究プログラムの一環として行われました。このプログラムでは、「Social Media Impacts on Social and Political Goods(ソーシャルメディアが社会財・政治財に与える影響:平和構築の視点から)」(2018年10月配信)をはじめとする政策提言を配信しています。戸田記念国際平和研究所は、今後も政策提言の配信、ワークショップの開催を行っていきます。また、2020年には「テクノロジーと平和構築に関するグローバル・サミット」を計画しています。